天王塚古墳は、特別史跡岩橋千塚古墳群の東、天王塚山山頂に位置しています。長さ88㍍の前方後円墳で、和歌山県下で最大級の規模を誇ります。造られた時期は6世紀中ごろとみられ、前回紹介した大日山35号墳の後にこの地域を治めた人物の墓と考えられています。

石梁と石棚がうかがえる石室の内部

 天王塚古墳で最も注目されるのは、遺体を納める横穴式石室で、石室の高さが5・9㍍と非常に高いことが特徴です。

 石室は結晶片岩と呼ばれる板石を積み上げ、左右の壁の間に架けた8本の巨大な石梁(いしはり)と、奥の壁から突き出た2枚の石棚により石室を高く積み上げます。

 岩橋千塚古墳群の特徴といわれる石梁・石棚ですが、天王塚古墳は岩橋千塚古墳群内で最も石梁・石棚の数が多く、高さは熊本県の大野窟(おおのいわや)古墳の6・48㍍に次ぐ国内2番目を誇ります。まさにこの地域における石室を造る技術の到達点であり、葬られた人物の絶大な権力をうかがわせます。

玉や首飾りなどの副葬品

 副葬品は、1964(昭和39)年の発掘調査の際に玉類や武具などが出土し、さらに53年ぶりに行われた2017(平成29)年の発掘調査では、5000点にも及ぶ玉類、飾られた履(くつ)または冠、銀製の魚形の飾りが新たに発見され、話題となりました。

 現在、天王塚古墳へは園路及び古墳の整備のため一般の方の立ち入りをご遠慮いただいていますが、今後は特別公開日を設けて皆さんが石室を見学できる機会を設ける予定にしています。ぜひご期待ください! (和歌山県立紀伊風土記の丘学芸員 金澤舞)

(ニュース和歌山/2021年11月27日更新)