いにしへ(え)の 人の植ゑ(え)けむ 杉が枝に 霞たなびく 春は来ぬらし 柿本人麻呂歌集による

 

 スギはヒノキとともに建築材として植林され、特に和歌山の山ではよく見かけます。また、花粉症の原因となることから、天気予報の時間でも「花粉情報」のコーナーがあるほど、私たちになじみ深い木です。

枝の先に花粉を飛ばす雄花が見られる

 諸説あるらしいですが、スギという名前は「真っ直(す)ぐな木・直ぐ木」が語源だと言われています。その名前の通り、天に向かうように真っ直ぐに伸びて、成長すると数十メートルの高さに達します。

 少し前までスギはスギ科、ヒノキはヒノキ科に分類されていましたが、現在の新しい分類ではスギもヒノキ科に含まれています。ヒノキ科スギって、ちょっと変な感じですね。

 万葉集にはスギを詠んだ歌がいくつかありますが、柿本人麻呂歌集にはこんな歌があります。

 「いにしへ(え)の 人の植ゑ(え)けむ 杉が枝に 霞たなびく 春は来ぬらし」

 昔の人が植えたであろうスギの枝に霞がたなびいている。春が来たんだなぁ──。遠くの山を眺めながら佇(たたず)んでいる情景が目に浮かびます。

 霞がたなびくほどのスギ、とても大きな木なのでしょうね。そんな自然現象から、春の訪れを感じるなんて、万葉人の感性の豊かさにはいつもながら驚かされます。

 今年の立春は2月4日。暦の上では春になります。あなたは春の訪れを何で感じるでしょうか。(歌山県立紀伊風土記の丘職員、松下太)

(ニュース和歌山/2022年1月15日更新)