徳川家康をまつる紀州東照宮(和歌山市和歌浦西)の祭礼、和歌祭。江戸時代初期の1622年に始まり、今年で400年を迎えます。5月15日㊐、東照宮と和歌山城周辺で開かれる式年大祭に向け、中心となって準備を進めてきたのが、四百年祭実行委員長の中山勝裕さん(58)です。歴史感じる衣装に身を包んで披露される伝統の時代絵巻。「百年後、『あの祭りがあったから今がある』と思ってもらえるものにしたい」と気合い十分です。

神輿に魂を

──400年の大きな節目が迫ってきました

 「生まれも育ちも、今の住まいも和歌浦。8人きょうだいの長男で、子どもの時、父に連れられ、弟や妹と見たのを覚えています。ただ、商工まつりの一環として開かれていた時代で、和歌浦でなく、城周辺で渡御行列を見て、丸正百貨店に行って…との思い出ですね」

──40代以上にはお城近くでの催しとの印象が強いかもしれません。

 「戦後、商工まつりの中で復興された和歌祭は1984年で終了。その後、90年に和歌浦で開かれたものの、祭り自体は存続の危機が続いていました。そんな中の99年、和歌祭保存会に青年部ができ、私も加わりました。開催場所を戦前と同じ和歌浦に戻し、和歌山を代表する祭りにするのが目的で、2002年から継続して開いています」

──復活に向けては、どのような活動を?

 「渡御には雑賀踊、薙刀振(なぎなたふり)など40以上の種目があり、それぞれ株と呼ばれる組織で受け継がれています。当時、各種目とも中心メンバーが70歳以上と高齢化が進んでいました。この株が途絶えると技が継承できません。後継者をつくるため、青年部メンバーが分かれて、各株の長老に学びました。私は神輿です。担ぎ手から始め、今は約160人の指揮を執る役を担っています。練り歩く約3時間、指示を出し続けますので、終わると声が枯れますね。東照宮の108ある石段をおろす前に神事を行います。不思議なんですが、神輿に魂が入ると、本当に重く感じるんですよ」

 

3種目が復活

──400年の式年大祭はどんな祭りに?

 「まずは例年通り、東照宮で神輿おろし。この後、『神輿わたり』として、約1㌧ある神輿をお城まで担いで運びます。この担ぎ手は和歌山大学と和歌山工業高校の学生さんにお願いしました。祭りを次代へバトンタッチしたいとの思いからです」

──続く渡御行列、今年はお城周辺の市中心部で行われますね。

 「スタート位置は、私が子どものころが丸正前でしたから、丸正跡にあるフォルテワジマ前としました。また、3つの種目を復活させます。行列の先頭で渡御が進んでいく道を清める役割の『棒振り』と『獅子』、そして子どもたちの華やかな衣装がかわいい『童子(どうじ)』です」

──特に見どころは?

 「全てを見てほしいですが、渡御行列の前に大名行列として、俳優の松平健さんが吉宗役で侍や中間(ちゅうげん)を率いてくれます。6年前、吉宗公ゆかりの東京・赤坂氷川神社の祭りに参加した際、松平さんが同じく吉宗役で出ておられました。そのインパクトたるや…。ぜひ記念の年に花を添えていただきたいとお願いしました」

──最後に意気込みを。

 「記憶に残る祭りにしたいのと、もう1つ、大きなテーマが〝未来へつなぐ〟です。岸和田のだんじりのように、進学や就職でふるさとを離れても、和歌祭の日は和歌浦に帰って参加しよう、見に行こうと思ってもらえるような存在にしていきたい。伝統の時代絵巻である和歌祭、100年後の500年へ引き継いでいくため、総大将として覚悟を持って臨みます」

参考記事

(ニュース和歌山/2022年5月7日更新)