チガヤは日当たりの良いところに群生するイネ科の草で、穂が風になびく光景はしばし蒸し暑さを忘れさせてくれます。夏になると、神社で「茅の輪くぐり」が行われますが、その輪はこの草で作っています。意外と身近な植物なのですね。

並べられた埴輪の近くに多くのチガヤが見られる

 新芽をかじると甘く、糖分が豊富なことが分かり、昔は食用にされていたこともうなずけます。しかし、一方で繁殖力の強い厄介な雑草として迷惑がられている一面もあります。確かに、道路の中央分離帯や田んぼのあぜ道などに群生が見られます。遠くから眺めている分には風情がありますが、そこでお仕事をされている人には困りものの草なのでしょう。

 風土記の丘西端にある大日山35号墳には、復元された埴輪群が野外展示されています。それをバックに見るチガヤの群生が、私のイチオシです。でも定期的に除草をしてくださるので、その光景に出合えないこともあります。

 万葉集にはチガヤを詠んだ歌が残っています。その中に作者未詳の次のような歌があります。

 「君に似る 草と見しより 我が標めし 野山の浅茅 人な刈りそね」

 浅茅はチガヤのこと。君に似ている草と気づいた時から、私が自分のものと印をつけておいたチガヤを、だれも刈り取らないでおくれ──との意味です。私が見初めた彼をだれも取らないでねという気持ちが読み取れるようです。チガヤのどんなところがその男性に似ていたのでしょうか。気になるところですね。

(ニュース和歌山/2022年6月18日更新)