真相が謎に包まれた状態を指す「藪の中」の語源になった芥川龍之介の短編小説『藪の中』。岩出市の朗読家、福山ひでみさんが、同作を読んだCDを1月1日に発売した。「本で読むのとは違った想像を膨らませて、耳で聞く面白さを味わってもらえれば」と話している。

 福山さんは大阪芸術大学放送学科卒業後、和歌山放送のパーソナリティーなどを経て、2007年にナレーションオフィスを和歌山市本町に開設。県内各地で朗読教室を開き、言葉の大切さを伝えるかたわら、生徒約30人とつくるグループ「イーマ」の発表会などを続ける。

 今回は、朗読にふれる機会のない人に届けようと、「声で描くもの〝語り〟」と銘打ったCDシリーズの製作を決めた。第1弾は何回も聞いて楽しめるよう、あえて難解なミステリーを選んだ。

 『藪の中』は、ある男性の死体を巡り、自殺か他殺か、登場人物の独白によって描かれる。一人ひとりの人物像をイメージしながら、猛々(たけだけ)しい盗人の若い男性、男に襲われ悲しみにくれる女性、亡くなった男性の言葉を話す巫女(みこ)ら7人を福山さん1人で演じ分けた。

 福山さんは「文学から遠ざかっている人に楽しんでほしい。次回は子どもと聞けるような作品に挑戦したいですね」と張り切っている。

 CDは1200円。発売に合わせ、小説や懐かしい民話をイーマのメンバーと披露する朗読カフェを同市狐島のLURUホールでスタート。奇数月の開催で、次回は3月30日(金)午後2時。1000円。希望者は同ホール(073・457・1022)。

写真=朗読の魅力を伝える福山さん

(ニュース和歌山/2018年2月14日更新)