漫画家 田村由美さん『ミステリと言う勿れ』〜主演は菅田将暉

 フジテレビの月曜夜9時、通称〝月9(げつく)〟枠で、1月10日、菅田将暉さん主演『ミステリと言う勿(なか)れ』がスタートします。原作は、和歌山市出身の漫画家、田村由美さんが描く、累計発行部数800万部を突破した同名の人気漫画です。主人公の大学生が独自の視点でひたすら話し、結果的に事件が解決される、どこか不思議なミステリー。作品への思い、ドラマ化への期待を聞きました。

菅田将暉 久能整 

ひたすらしゃべる

──連載中の作品がドラマになります。

 「とても光栄です。元々単発の読み切りで、これまでの作風とは違うものを目指しました。会話劇のような漫画を描いてみたくて。作中では主人公の久能整(くのうととのう)がひたすらしゃべります。整は事件を解決しようとは特に思っていないんですが、話しているうちに何かが見えて来たり、だれかの気持ちがあらわになったりします。整が何を話すかを楽しみにしてくださる読者は多いです」

──そんなにしゃべる主人公だと、漫画の場合、セリフで埋まってますね。

 「そうなっています。絵の見せ場が少なく、多いセリフを読んでもらえるか不安でした。でも、たいへん好評をいただいて、私も『もうちょっと整を描きたいな』と思い、連載に。そしてなんとドラマ化まで。応援してくださる皆さんに育てていただいたと、本当に感謝しています」

──主人公の整を、菅田将暉さんが演じます。

 「整は基本、静かにしゃべります。でも心の奥にはうずまいてるものや祈りがあります。それは私自身の願いかもしれません。撮影前、菅田さんから直接質問を受け、たくさんお話しました。整の気持ちや原作者の私まで理解しようとされる姿に感激しました。こんな風に向き合ってくださるんだと。整の天然パーマもご自身の髪で作ってくださって。菅田さんの演技はもちろん、ドラマそのものも楽しみです」

 

募る故郷への思い

──今年、デビュー39年です。

 「子どものころから漫画を描いていて、ずっと描くには漫画家になるしかないと、18歳で上京しました。無鉄砲と言われましたが、あの時はそれ以外の道を考えられませんでした。39年間、いろんな主人公を描いてきた中で、友人からは整が一番、私に似ていると言われます。あんなにしゃべりませんが、頑固なところが似ているのかな」

──作品に和歌山を取り入れることは?

 「これまで紀州熊野を舞台にしたり、和歌山城の紅葉渓庭園をイメージした場所を出したりしています。和歌山で過ごしたのは18年と短いですが、遊び場だったお城は今も自分の中で象徴のようにあります。夜になるとお城から聞こえてきたドヴォルザークの『家路』。前作の『7SEEDS』に使いました。若いころより故郷への愛着が大きくなり、もっと皆さんに、みかんや梅干しやお醤油やパンダ、徳川御三家、世界遺産などを知ってほしいと、つい紹介しています。今後も機会があれば和歌山を出したいです」

──今後は?

 「今はとにかく『ミステリと言う勿れ』を頑張ります。他にも描きたいものがあるので、読んでくださる人がいる限り、描き続けます」

 

『ミステリと言う勿れ』

ミステリと言う勿れ 少女漫画

 天然パーマがトレードマークの大学生、久能整が様々な事件に巻き込まれる。取調室や乗っ取られたバス内、新幹線の座席といった閉鎖空間で、整がしゃべる独自の見解が、かかわる人々の悩みや事件の謎を解きほぐしていく──。コミック1~10巻発売中。連続ドラマは10日㊊スタート。毎週㊊午後9時、フジテレビ系。

 

田村由美

田村由美  似顔絵 漫画家

 和歌山市出身。1983年に『オレたちの絶対時間』でデビュー。現在、月刊フラワーズで『ミステリと言う勿れ』、増刊フラワーズで『猫mix幻奇譚とらじ』を連載中。『BASARA』は93年に小学館漫画賞を受賞。98年にアニメ化、2012~19年に舞台化され、今月も上演される。『7SEEDS』は07年に小学館漫画賞を受賞し、19年にアニメ化された。13年に和歌山県文化功労賞受賞。

(ニュース和歌山/2022年1月1日更新)