和歌山県立和歌山高校(和歌山市新庄)のボランティア団体「小倉地区活性化委員会」が、学校西側の山にある寺山古墳群へ続く山道を整備しようと「古墳プロジェクト」を本格化させている。かつては地元住民が利用していたとされるが、現在は竹やぶや雑草に覆われ、通ることが出来ない。生徒たちはこの道を蘇らせ、古墳一帯を地域の憩いの場にすることを目指している。
地権者宅を訪問
きっかけは昨年夏、当時の同会3年生が地図で「寺山古墳群」を見つけたことだった。「ここ何だろう」「古墳で地域おこしができるかも」。ただ、立ち入るには土地所有者の許可が欠かせない。そこで久保篤史教諭のアドバイスを受け、和歌山市役所や法務局に出向き、登記簿謄本を取得。複雑に入り組んだ地番図を貼り合わせて地図を作り、権利関係を調査して地権者をリストアップした。また、山道の一部は学校の敷地内にあったため、ここを「校内山道」として整備。約4カ月かけて木を伐採したり、枯れ葉、泥を除去したりし、散策できる状態にまで回復させた。

地権者㊨に構想を説明するメンバーたち。資料の文字は大きく読みやすくするなど工夫した
さらに今春からは、現3年の砂田みさき委員長ら執行部メンバーが、地権者の家へ足を運んで立ち入り許可を得る草の根活動を展開している。
取材に同行した日は4人が学校に集合。徒歩で移動する間もハキハキとしたしゃべり方を練習するなど、緊張が伝わってくる。目的の家に到着すると、まず久保教諭が挨拶。次いで生徒が自作の名刺を差し出し、資料を開きながら活動の経緯や目的を丁寧に説明した。「交流の場を作りたいんです」と懸命に話す生徒たちに、応対した女性が温かく「頑張ってね」と励ましを送ると、全員の表情がホッとゆるんだ。
熱意が共感呼ぶ
メンバーの地道な取り組みは地権者たちの共感を呼び「いいことをしているね」「できることは協力するで」と賛同の声が寄せられている。時には昔話を聞かせてもらうこともあり、周辺の歴史にふれる機会にもなっている。
生徒らを見守る地元の和歌山小倉郵便局、井谷敏通局長は、「高校生が地域に溶け込もうとする熱意が伝わってくる。親や祖父母世代の住民と言葉を交わすことは、何よりの社会経験になるはず」と期待を寄せる。
これまで許可を得たのは5人ほど。地権者は30〜40名おり、先の長さが予想される。しかし、砂田さんは「できるだけ多くの人に思いを伝えて、来年の春ごろには山道全体を整備し、気軽に来てもらえるようにしたい」と意気込む。完成時には、伐採した竹を利用した竹炭づくりや竹細工、ツリークライミング体験などを予定している。
「大人だと躊躇してしまうようなことも、若いエネルギーで邁進している。『地域の人に喜んでもらい、地域を元気づけよう』を合い言葉に活動する生徒たちの行動力や主体性は本当に頼もしい」と目を細める久保教諭。「プロジェクトを通じてこの場所を好きになり、周囲から愛されていることを実感し、さらにその恩を皆さんに返したいと思える人に成長してほしい」と願っている。
■寺山古墳群(てらやまこふんぐん)

和歌山市岩橋千塚古墳群の東約5㌔㍍に位置する、ドーム型石室をもつ古墳群。6世紀末から7世紀にかけ、渡来人によって作られたという説があるが、一帯は勾玉や臼玉など装身具の材料となる滑石が採掘される場所で、ものづくりを専門とする忌部氏(いんべうじ)と関係のある人々が古墳群を構築したという説もある。なかでも古墳群最大の寺内15号墳は一辺25㍍の方墳で、石室は全長6.3㍍を誇る。結晶片岩に加え、蛇紋岩(じゃもんがん)という石室にはあまり使われない石材を使用しているのも特徴。
【協力/和歌山県立紀伊風土記の丘、田中元浩主査学芸員】
(ニュース和歌山/2026年6月20日更新)

























