提案者:山本 理恵(未来スクール実行委員長)

 高校卒業後の県外流出率日本一。このうれしくない記録を耳にしたことがあるかもしれません。和歌山は25年以上、ずっとこの状態が続いています。和歌山に仕事がないから若者が留まらない、とも言われますが、実際は地元の中小企業は人手不足で悩んでおり、求人も多く出ています。つまり、仕事内容というよりも、和歌山で働き暮らすことに希望を失っている若者が多いことが問題の原因ではないでしょうか。

 私はこの問題を改善するための方法として、地元の大人が学校で子ども達へ職業観を伝える授業を開くことを提案します。和歌山で働くこと、暮らすことがどんなにやりがいがあって楽しいことかを、子ども達の近所で普段働いている大人達が伝える授業です。この授業を、全生徒が参加する定期的なプログラムとして実施したいのです。

 「未来スクール」と題した同様のプログラムを2014年から毎年、年に1回、和歌山市で開催してきました。これは1日限りのプログラムで、35人の〝一日先生〟が授業し、子ども達は自分が興味のある職業の先生を選んで参加します。

 弁護士、建築士、ヘアメイクアップアーティストなど、多様な職業の先生が授業を行います。職業の説明や人生論を語るだけでなく、授業には必ず体験を盛り込み、子ども達に「この仕事カッコいい!」と思わせるための工夫が一日先生達には求められます。40分という限られた時間の中でいかに子ども達をワクワクさせることができるか、一日先生達は練習と準備を重ねて授業に臨みます。

 私は、未来スクールのような授業を学校教育の日常に取り入れていきたいと考えています。1日限りのイベントでは、参加できる子どもに限りがあります。学校教育の授業として実施することにより、基本的には全ての子ども達に伝えることが可能となります。

 キャリア教育は「社会を生き抜く力をつけるための教育」です。多様な価値観や生き方、働き方に触れることは子ども達にとって自分の進路や人生の幅を広げるチャンスとなります。

 また、なりたい大人の像を地元で見つけることで、東京をはじめとした「大都市へ出ないと夢は叶えられない」というような若者の意識を変えることができます。地域を支える一員としての職業観を抱くことは、結果として社会人になる時に和歌山で働く選択をすることにつながるのです。

(ニュース和歌山/2017年8月26日更新)