第二次世界大戦の戦跡を研究する和歌山市の森﨑順臣さんの講演を8月24日、同市内の「平和と文化を語るつどい」で聞いた▼森﨑さんは終戦直前に和歌浦地区に掘られた壕を調べ、米軍の本土上陸に備え、日本軍が築いた陣地であったことを史料から裏付けた。秋葉山を拠点とした部隊の任務を記した史料に「肉攻」の文字を見つけ、上陸した米軍へ自爆攻撃を考えていたのを明らかにした▼4年前に森﨑さんの研究を取材させて頂いた際、夏の盛りに2人で天神山に登った。蛇が出ると、木の枝で道を叩きながら汗だくで歩き回り、陣地跡を見て回った。秋葉山交番裏にある陣地の穴にも入った。蚊が飛び交い、足元の砂を踏むと、無数の虫がうごめき回った。山中で一日中、穴を掘り続けた人たちの厳しい状況が頭をよぎり、無理だと思った▼山中の砲台跡には時を経て、埋まりつつある所もあると森﨑さんは講演で触れていた。戦時を体験した世代が減る中、埋もれさせてはならない経験はまだまだ多い。 (髙垣)

(ニュース和歌山/2019年8月31日更新)