老舗和菓子店の駿河屋が新会社として再出発する。「本ノ字饅頭」「練羊羹」と思い入れある菓子は人それぞれで、筆者の場合は端午の節句の「粽(ちまき)」だった。ただ、昨年初めて「味が変わった?」と感じた。気のせいだったか、それとも原因があったかは分からない。確かなのは、それから1ヵ月足らずで閉店したことだ▼再開は、素直に嬉しい。だが、味の再現のみでは愛好家が喜ぶだけで、根本的な解決につながらないのではとの危惧はある。駿河屋は、拡大路線を反省。「菓子のみに生きる」を掲げ、「手作りを基本に、身の丈にあう経営を目指す」という。加えて、「地域貢献に力を入れる」と明言した▼ならば、徳川家とのかかわりなど駿河屋にしか伝えられない事柄をさらに押し出してもらいたい。また、四季折々の和菓子は単なる商品でなく、それぞれ意味が込められていることも改めて伝えてほしい▼老舗の風格に、和歌山文化の担い手として新たな息吹を感じられるような完全復活を願う。(小倉)