「ダチョウの大三郎が死亡しました」「クロザルのしじみが死亡しました」「ホンドキツネのコエダが死亡しました」──。愛媛県立とべ動物園のホームページには動物たちが旅立った情報が目立つ▼一般的に、動物園では注目度の高い動物以外の死はあまり公表しないらしい。しかし、とべ動物園は今年から小動物と家畜を除き全て発表している▼ねらいは何か。先月、朝日新聞に掲載された記事で、渡辺清一園長は「愛らしい様子を見てもらうだけでなく、子どもたちに命の重さや尊さについても考えてもらいたい」と説明。そして「社会は死を遠ざけがちですが、死を知らないと命の重みが分からない」と語っていた▼ホームページでは単に死を伝えるだけでなく、亡くなるまでの経過や解剖で分かった死因、その動物の平均寿命を分かりやすく掲載。「大人しく、奥さんの尻に敷かれていました」など、その動物の性格に触れることもある。行間ににじむ飼育員の愛情、思いやりの心も育まれるにちがいない。 (西山)

(ニュース和歌山2016年10月15日号掲載)