和歌山市でオールロケを行った映画『ちょき』が上映中だ。これまでは和歌山でロケがあっても、いざ映像になった時は架空の島…みたいなことがあったが、今回は、じゃんじゃん横丁、天満宮、マリーナシティ、紀の川と見慣れた場所がそのものとして出てくる▼物語も純愛というより、それ以前の一断面を切ったかのようなさわやかな内容で、中でも主演の増田璃子さんの演技が光っていた。それを金井純一監督に伝えると、「早くブレイクしてほしいです」と高く買っていた▼脚本は当初、もっととがっていたらしい。が、監督いわく「地元の人の優しさにふれ、優しくなりました」。住み慣れると分からないが、物語を変えるそんな磁場があるのかも▼確かに見慣れたあの場所、この場所が映画の「絵」となると、ことのほか映える。都会で暮らすと、流行や消費と情報にばかり目がむき、住んでいるまちを意識する機会は少ない。暮らしが積み重なったまちを感じることができる、その至福をかみしめた。 (髙垣)

(ニュース和歌山2016年12月3日号掲載)