新型コロナウイルスの猛威で生活が一変したのは、ちょうど2年前のことです。以前まで全国200軒以上のゲストハウスを旅し、ライター・編集者をしていた私は、和歌山県外での仕事が難しくなった代わりに、和歌山県内での取材依頼をいただくことが多くなりました。

 一番お世話になったのは、JTBが運営するふるさと納税サイト「ふるぽ」と、その姉妹サイト「ふるさとLOVERS」です。県内の事業主のもとを訪れ、商品づくりのこだわりや地域に対する思いを伺い、写真を撮影してWEB記事を執筆する内容でした。取材を通じて知ったのは、まさに灯台下暗しな和歌山の魅力の数々です。

 例えば、白浜町の日帰り入浴施設「えびね温泉」では、日置川を眺めながら源泉100%の湯に浸かる心地よさに魅了され、併設された食堂で提供される「温泉水うどん」のおいしさに驚き、心も体もホカホカと満たされました。また、有田川町にある天保11年(1840年)創業の酒蔵、髙垣酒造では、少量手作業にこだわった現場を見学し、ものづくりの尊さに触れ、9代目杜氏が亡き夫の思いをつないで酒造りと母親業を両立させる姿に感動しました。

 これまでの私は、海・山・川といった自然環境に恵まれ、1年を通し様々な果物が採れる和歌山県に暮らしながら、伊勢海老や桃のおいしい食べ方も、梅干しの加工方法も、近所にある精米機会社が世界的に有名だということも、全然知りませんでした。「虹のふもとには宝物が眠っている」と言いますが、まさに地元のヒト・モノ・コトの素晴らしさを痛感させられる機会となりました。

 そういった日々の発見から「紀流」を1年間お届けしてきましたが、今回をもって卒業します。これまでありがとうございました。この情報が、皆さんの暮らしを少しでも照らしていましたら幸いです。

フリー編集者 前田有佳利(今回が最終回です)

(ニュース和歌山/2022年3月19日更新)