今回は、和歌山市の宮本寿惠さんから届いた疑問「どうして『運動会の歌』があるの?」です。

 多くの小学校は運動会シーズンまっただ中。児童のみなさんはリレーやダンスの練習に汗を流しているのでは?

 和歌山の小学校では、運動会の開会式や閉会式に校歌のほか、『運動会の歌』を歌います。実はこれ、和歌山でしか歌われていないんです。なぜこの歌があるのか、そして、だれが何のために作ったのか。

 同市教育委員会学校教育課の竹内圭さんに聞いたところ、60年以上前に和歌山を襲った、ある大きな災害がきっかけでした。

 


 

子どもたちに希望を届けるため

 「なぜ運動会の歌があるの?」。和歌山市教委の竹内圭さんに聞きました。

 きっかけは、1953年7月に起こった紀州大水害でした。前線による豪雨が県内を襲い、24時間で500㍉と記録的な雨で、熊野川や日高川がはん濫し、死者、行方不明者は1000人を超えました。

 この水害からの復興が進んでいた56年、被害の少なかった同市の教委が、子どもたちに元気や希望を届けたいと『運動会の歌』を募集。当時、小学校教員だった故・伊藤孝文さんの歌詞と、中学校教員だった故・秦野和夫さんの曲が選ばれました。すると、運動会にこの歌を歌う小学校が県内に広がりました。竹内さんは「ただ、今では和歌山市内でも歌わない小学校が増えています。私も小学生のころに歌っていたので、なくなっていくのは寂しいですね」と残念そう。

 「いざ友よ 希望明るく手をくんで 明日の日本をせおうのだ」と、前向きな歌詞が印象に残るこの曲。和歌山独自の文化としてだけでなく、これからの時代を生きる子どもたちに秋空の下、声高らかに歌い継いでほしいですね。

(ニュース和歌山/2019年9月21日更新)