100余年の時を超え受け継がれてきた地場産業から、最新の製品が和歌山で作られているのを知っていますか。この写真は橋本市高野口町の織物工場で撮影しました。高野口では繊維産業が盛んだった明治時代から、電車や国会議事堂のシートに使われるパイル織物を生産しています。織機がコロコロと音を立て糸を紡ぎ、まるで魔法のように柔らかな生地を作り上げます。それを、機械だけに頼ることなく、熟練した職人が厚みや毛並みを一枚一枚丁寧に確認しています。木造の工場はモノクロ写真の時代を彷彿(ほうふつ)させるような光景ですが、ここでは今、スマートフォンやパソコンの液晶パネルを磨くクロスを製造しています。伝統を守りながらも、革新を続け世界で勝負できる製品を創り出す。これこそ、日本のものづくりの真髄だと感じました。

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サイモン・ワーン(Simon Wearne)

オーストラリア出身の写真家、映像ジャーナリスト。2008年に来日し、和歌山大学観光学部の特任助教を務めるかたわら、太地町の捕鯨文化をユネスコの産業遺産に登録するため、文化財の独自研究と調査を進めている。

(ニュース和歌山2015年8月26日号掲載)