怖さ:2
家の妖怪
出没地域:紀の川市

 昔、那賀郡田中村(現在の紀の川市)に赤尾長者と呼ばれる家があった。ある年、夫婦に待望の男の子が生まれた。名前は亀千代。しかし、不慮の事故で亡くなってしまった。夫婦は嘆き悲しんだが、葬儀の日、「死んだ子の掌に名前を書いておけば、生まれ変わった先が分かる」との伝承をふと思い出し、棺に眠るわが子の掌に「赤尾長三郎の一子、亀千代」と書いた。何年か経ったある日、子どもを抱いた隣村の夫婦が訪ねて来た。その子の掌には生まれながらに文字が浮かび上がっており、何度洗っても消えないので、お寺に相談したところ、「赤尾家の亀千代の生まれ変わり。赤尾家の水で洗えば字は消える」と言われたとのこと。長者夫婦がわが子のように丁寧に家の水で洗うと、掌の字は瞬く間に消えた。

            

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(ニュース和歌山/2022年5月21日更新)