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 アフリカと言えば何を思い浮かべますか? 豊かな自然や野生動物もあれば、貧困、紛争、エイズ、マラリアといった暗いイメージも頭に浮かびます。

 タンザニア、マラウイは貧しい地域でしたが、ザンビアのヴィクトリア滝付近、そしてボツワナの町に行くと一転します。日本並みの価格・品ぞろえのスーパーマーケット、充実したインフラ、これまでのアフリカではありません。水道や電気の心配もなく、冷たいジュースが飲め、インターネットもできます。

 一方、掘っ立て小屋の食堂、頭に大きい荷物を載せた人、路上の物売りのおばちゃんが姿を消し、値段交渉の必要もなくなりました。豊かさと引き換えに人と接する機会が減り、徐々にアフリカの感覚が薄れてくるうれしさと寂しさがありました。

 しかし、ボツワナと大西洋岸のナミビアでは別のアフリカを体験できました。両国とも面積は日本の約2倍ですが、人口は和歌山県の2倍程度。世界有数の低い人口密度で、町と町の間が非常に広く、150㌔(和歌山市~潮岬間と同じ距離)何もない区間もありました。

 ボツワナでは、45度以上のしゃく熱、野生動物の恐怖を感じながら、サバンナに切り開かれた一本道を走りました。ツキノワグマサイズのハイエナの死がい、頻繁に現れる巨大なゾウ、ライオンの目撃談…。ここは動物園ではなくサバンナのど真ん中です。襲われたらひとたまりもありません。

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 あるとき、ゾウの群れと道路上で出くわしました。完全に道路を封鎖し、僕たちの行く手を遮りました。近づくと、大きな耳を広げ、巨大な体をさらに大きく見せて威嚇しながら向かってきました。人生において、「ゾウの横断待ち」「ゾウに襲われかける」体験はこの先ないでしょう。幸い、動物に襲われることはなく、路上にいたカメレオンやフンコロガシと戯れ、ダチョウと併走できました。

 そして、ナミビアには巨大なナミブ砂漠があります。砂漠の面積は和歌山県の10倍以上あり、奥地まで行くと見渡す限り独特のオレンジ色の砂の海。稜線の数々が織り成す自然の曲線美を独り占めできました。

 最後に南アフリカの喜望峰まで行き、4ヵ月、バスを含め約7000㌔にわたるアフリカの旅を終えました。アフリカには56の国があり、それぞれに文化や言葉があります。アジアという国が存在しないようにアフリカという国も存在せず、国ごとに特徴があります。アフリカで1つ悪いことが起こると、全体が悪い印象を受けてしまうことが残念です。実際に走ると、当初抱いていた暗いイメージの部分が全くないとは言えませんが、幸運にも人による危険な体験は1度もなく、今まで以上の「非日常」を楽しめました。

 イメージや情報だけでなく、現場の空気を味わうことで本当のアフリカを知ることができたと思います。次は東ヨーロッパをまわります。

写真 このページ上から=アフリカ大陸の南端にある喜望峰にて、ダチョウと併走した

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 自転車で世界一周の新婚旅行に挑む辻陽平さん、夕佳さんの連載は奇数月の第3土曜号掲載で次回は9月19日号。

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(ニュース和歌山2015年7月18日号掲載)