1923年から約3年間存在し、そのわずかな期間に全国優勝を果たした和歌山高等女学校(和高女)軟式野球部。当時、主将を務めた柳繁代さんの手記が今春、和歌山市吹上の桐蔭高校で見つかり、部の歴史を紹介する展示が5月27日㊊まで、同市本町のわかやまスポーツ伝承館で開かれている。同館の江川哲二さんは「田辺市にチームができ、和歌山県出身選手も活躍する女子野球。野球王国和歌山の知られざる歴史を垣間見て」と話す。

スポーツ伝承館で展示

 和歌山中(現桐蔭高)硬式野球部が史上初の夏の選手権連覇を果たした22年、和歌山県内で野球ブームが巻き起こり、その人気は女子にまで広がった。県内では和高女、粉河高女、橋本高女に野球部ができ、互いに遠征やリーグ戦を行った。和高女は24年に開かれた第1回日本女子オリンピック大会に出場し、県勢対決となった決勝で粉河高女に14─11と競り勝ち優勝。しかし、26年に県から「女子に不適切」「不妊症を招く可能性がある」との理由で禁止命令が出され、女子野球の歴史は3年あまりで幕を閉じた。

 この経験を柳さんが90歳だった97年、手記にまとめ桐蔭高へ寄贈。今春、約20年ぶりに手記と写真が見つかり、同館で保管することになった。江川さんは「初めは何人で野球をするのかも分からなかったそう。結成時の写真はスカートですが、全国優勝の写真はズボンに。全て手縫いで作ったと書かれています」。

 展示では、6年前に柳さんの家族が同館に贈った日本女子オリンピック大会の優勝メダルと当時の写真を紹介。県内唯一の女子硬式野球クラブチーム「和歌山レジーナ」のユニフォームやバット、グローブ、和歌山にゆかりある女子プロ野球選手の道具なども。午前10時~午後7時。同館(073・423・2215)。

写真=1923年に撮影された写真に写る柳さん(左から2人目)

(ニュース和歌山/2019年5月18日更新)