〈支え合おう 手を取り合おう〉

 新型コロナウイルスが社会に影を落とす一方、新たな応援の形が生まれている。受けた恩を別の人へとつないでいく活動を始めたカフェ、オリジナル曲を作り飲食店に〝寄付〟する音楽家、ウイルス収束後に使える〝未来チケット〟を広める飲食店経営者──。今こそ支え合おう、手を取り合おう。

 

ワンコインで広がる応援の輪〜カップケーキ人気の店CUPS

 かわいらしいケーキが並ぶショーケースの向かい、カラフルな装飾が目を引くボードには「PAY IT FORWARD」の文字。客が500円で購入した丸いカードがそのボードにぶら下げられていく。別の客はカードを手に取りケーキを注文。その客は無料で味わえる──。

 和歌山城南にあるコーヒーとカップケーキが人気の店CUPS(和歌山市藪ノ丁)が始めた「ペイ・フォワード」は、恩を送り、別の人に恩を回す、アメリカでよく行われる取り組み。親切にされた相手ではなく、関係のない人に恩を返すことで、見返りを求めない無償のやさしさが社会を巡る。日本でもカフェや食堂で増えている。

 CUPSでは4月25日にスタート。カードを購入するとレジ向かいのボードに貼り出される。別の客がそのカードを使用すれば、1枚につきケーキか飲み物、焼き菓子のうち1つを無料でもらえる仕組みだ。

 オーナーの西山麻紀さん(34)は「医療や介護の仕事をする方はじめ、コロナの影響で疲れてしまった人に使ってもらいたい。ワンコインならだれでも気軽に応援し合えると思いました」と話す。

 西山さんがペイ・フォワードを知ったのは20代。カフェについて学ぶため訪れたアメリカで広く浸透していることに興味を持ち、いつか自分の店でもと思っていた。コロナウイルスの感染拡大が始まった時、自分の店なりにできることはないかと悩み、「地元の人に必要とされる店になりたいとの開業当時からのコンセプトを突き詰めよう」と踏み出した。

 知人に話したところ、多くの賛同者が現れ、一度に20枚購入する人や、カードだけ買いに来る人も。2週間で90枚以上集まった。

 一方の利用者からは、「優しさを感じる」「心がほっこりした」との声が寄せられ、「次は私がカードを」と購入する人もいる。また、利用者はメッセージカードに「Thank you」の文字と共に、思い思いのイラストを添えて店員へ。そのカードは店内に貼り出される。西山さんは「だれでもだれかのヒーローになれます。気軽に楽しんで使ってほしい。他の店にも広がれば」と望んでいる。

 ペイ・フォワードの考え方は、社会や経済における価値の創出という点でSDGsに通じている。同市企画課でSDGs担当の滝本智史さんは「日本ではまだ一般的ではないが、クラウドファンディングのように、新たな人と人とのつながりや支え合う形として定着する可能性がある」と期待している。

 ㊊定休。正午〜午後6時。同店(073・488・7154)。

写真=ボードにかけられた多くの丸いカードがやさしさのバトン

 

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(ニュース和歌山/2020年5月16日更新)