現代社会と人文社会科学

 最近、児童・生徒そして大学生が農村や地域社会に出かけ、現地を歩き、地域の人から話を聞くといったフィールドワークや社会調査活動が行われています。この取り組みは、校内から外へ出ることで学びが広がり、さらには地域の方との異世代交流や社会参加につながるなど、様々な教育的可能性を持っています。

 現在、大学でも自治体を中心に地域社会と連携し、地域を志向した教育・研究・社会貢献として「地(知)の拠点整備事業(大学COC事業)」を文部科学省が推進しています。和歌山大学では学部を越えた「熊野フィールドワーク」が開設され、古座川町での観光資源調査やゆずを中心とした産業や集落の水道に関する調査を通し、過疎化の現状把握と地域資源の再発見を行っています。

 このような農村地域を舞台にしたフィールドワークは、地域の方との交流や体験を通じて、その土地の自然や文化に触れる貴重な機会になります。農業を知らない学生達に、新たな地域からの学びを提供してくれています。

 一方で地域も、若者である学生やこれからの地域を担う子ども達との交流は、若者ならではの視点による地域の新たな魅力の再発見につながります。また、学生達による祭りなどの地域イベントへの参加なども、新しい活力を吹き込みます。子どもや学生との地域交流は、双方にとって異なる視点や価値の発見を生み出すのです。

 今後、地域連携教育を持続可能な交流にするには、「交流・体験・地域発見」から「問題解決・知識共有」へと展開する必要があります。フィールドワークや調査活動などを「体験させる」だけでなく、その結果をきちんと地域に還元することが大切です。すなわち、住民と学生が地域に真摯に向き合うことで信頼関係が生まれ、互いを思いやる気持ちが、地域を思いやる気持ちになるといえます。  

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 和大とニュース和歌山は毎月原則第1土曜に和歌山市西高松の松下会館で土曜講座を共催。次回は6月6日(土)午後2時。講師は教育学部の丁子かおる准教授で、演題は「子どもの学びと育ち〜乳幼児期からはじまる造形」です。

(ニュース和歌山2015年5月30日号掲載)