東京で公演されるある舞台を毎年楽しみにしている。しかし2度目の緊急事態宣言が出た今年は、遠征を止めることにした。「コロナさえなければ…」。割り切れない思いがくすぶる▼新型コロナウイルスが国内で初めて確認されてから1年が過ぎた。この間、感染者やその家族、医療従事者への中傷や差別は後をたたない。行き場のない感情を他者へ向けてしまうのだろうか▼そんな中、「シトラスリボン運動」を知った。回復した人をやさしく受け入れる社会にとの思いを込め、3つの輪の形に飾り結びした黄緑色のリボンを身に着ける。愛媛県の有志が始めた活動で、和歌山でも広まりつつある▼だれだって未知の病に対する不安や恐れはある。行動が制限されることへのやるせなさも分かる。だからといって、だれかを傷つけることで自分を守るような社会にはしたくない。まずは自分から声をかけたり、心配したり。少しでもやさしくありたいと、家にあった黄緑色のひもで作った飾りをカバンに潜ませてみた。 (得津)

(ニュース和歌山/2021年1月23日更新)