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 江戸時代の地誌書『紀伊国名所図会』(写真上、※)に描かれた城下町和歌山の風景に彩色し、歴史を読み解く『城下町の風景Ⅱ〜カラーでよむ「紀伊国名所図会」』(編集・解説=額田雅裕・和歌山市立博物館館長、彩色=芝田浩子)が4月23日(土)、ニュース和歌山から発行される。2009年の『城下町の風景』の続編で、32枚に及ぶ絵図を紹介し、見慣れた風景の中にある、歴史との接点を見出す。著者は「本を手にぜひ城下町を歩いて」と望んでいる。

 『紀伊国名所図会』のモノクロ絵図に色をつけ、今に伝えるおなじみのシリーズ。12年の『和歌浦の風景』を含むとシリーズは第3弾となる。

 『城下町の風景Ⅱ』は14年1月22日〜15年7月8日、30回の本紙連載をもとに、古地図「和歌山城下屋敷大絵図」と現在の地図、写真をまじえ、読者が風景の今昔を味わえるよう編集した。

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 今回は「駿河屋店」「紋羽織屋」「追手入口傘師」と、当時のにぎわいを感じさせる絵が目をひく。特に老舗菓子店「駿河屋」を描いた「駿河屋店」(写真上2)は、紀州藩のお抱え絵師、岩瀬広隆による会心の一作といえるち密な絵図に芝田さんが丹念に色を塗り込んだ。額田館長は「菓子をこねて成形し、蒸す製造過程が正確に描かれ、藩に納める菓子と庶民用の菓子では作り方が違う点までみてとれます。写実的に細かく記録している点で、『紀伊国名所図会』は他にない素晴らしい名所図会と言えます」。

 傘屋が並ぶ町並を描いた「追手門入口傘師」は、和傘の復興に取り組む海南市のグループを芝田さんが取材し、和傘の製造にそって色を塗り分けた。芝田さんは「分業が描かれ、傘の仕組みまで分かります。ユーモラスな人の表情もあり、楽しんで塗れました」。

 神社仏閣の絵図が多いのも今回の特徴だ。芝田さんは「連載当時、お寺や壇家さんからお礼を言われ、皆さんの故郷への愛を感じた。絵は一見似ていますが、地形などが反映され、個性的です」。額田館長は「神社や寺を巡り観光するのが江戸時代の旅でした。今に残る寺もあれば、東本願寺の紀州の中心でありながら今はない長覚寺のような大寺院もあった。ぜひ本を手に巡ってほしい」。

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 このほか、荷船が行き交った広瀬河岸、現在の紀の川河口付近の御船蔵、城の鬼門を護る若宮(栗林)八幡宮、田井ノ瀬にあった紀の川渉(写真上3)と身近な場所のかつての姿を伝える。また額田館長の書き下ろしコラム15本を加えた。「長屋門」「徳川家御廟」のほか、生誕の地がある南方熊楠、徳川吉宗らについて記し、城下町和歌山の魅力を凝縮した。

 A4判。オールカラー64㌻。1080円。帯伊書店、宮脇書店ロイネット店、宮脇書店和歌山店、宇治書店、TSUTAYA WAYガーデンパーク店・和歌山高松店・オークワ本社店・岩出店・海南店・打田店、WAY和歌山ミオ店・ミレニアシティ岩出店、オークワパームシティ来夢書店・セントラルシティ店、イオン未来屋書店、松木書店、太田書店、福岡書店、紀州屋、荒尾成文堂、林書店、ブック・ユー、宮井平安堂貴志川店、県立博物館、和歌山市観光協会、ニュース和歌山ほかで取り扱い。ニュース和歌山HPから購入できる。ニュース和歌山(073・433・4883)。

『紀伊国名所図会』…江戸時代後期の1811年、紀州藩の商用を担った帯屋七代目の高市志友の発案で企画発行された。紀伊半島の寺社、旧跡、景勝の由来が記された計22冊で、江戸時代の庶民の暮らしが分かる貴重な史料として知られる。

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写真下=編集・解説の額田館長(左)と彩色の芝田さん

(ニュース和歌山2016年4月23日号掲載)

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