和歌山市の写真家、照井壮平さん(41)が初の写真集『狼煙(のろし)』を10月2日に出版した。25年に渡り熊野を撮り続けた集大成で、「紀伊半島から全国に向けて狼煙を上げた。自然のおどろおどろしさの中にある魅力に気付いてもらいたい」と語っている。

 高校生の時に写真家の父親と長崎県の軍艦島を撮影、本格的に写真にのめり込み、大阪芸術大学写真学科へ進学した。在学中にアメリカに渡り、印象的な明暗の対比を生み出すモノクロ写真の技術「ゾーンシステム」を学んだ。

 1997年には、中辺路の棚田や訪問診療の医師が連れた犬などを旅するように撮った『ドライブショット・紀州』を発表。有望な若手作家の作品を買い上げる清里フォトアートミュージアム・ヤング・ポートフォリオ賞を受賞した。審査員の篠山紀信さんから「このまま都会に出るのではなく、熊野の自然を撮る独自のスタイルを貫くように」との言葉を受け、自信を深めた。2011年にはフランスの雑誌『ヴォヤージュ』で6㌻に渡る熊野・高野山特集を担当。金剛峯寺や本宮大社の写真を掲載した。


 『狼煙』は、青岸渡寺から大峯の山中を目指して走る山伏の姿、みなべ町の丸太をくりぬいた養蜂箱〝ゴウラ〟、熊野古道の一方杉、雪の降る高野山など、熊野、高野、大峯に住む人々の暮らしや風景69枚を収めた。写真の明るい部分と暗い部分を11段階のグレーで表現するゾーンシステムで自然の奥深い陰影を描き出した〝熊野グレー〟が見どころだ。「各地で車中泊を繰り返しながら絶好のポイントを探しました。山岳修行の撮影では遭難しかけたことも。ほら貝を吹きながら山伏が探してくれました」

 6912円。112㌻。ガーデンパーク、宮脇書店和歌山店ほかで販売。照井さん(073・460・4095)。10月21日午後7時、ガーデンパークでトークイベントを開く。予約不要。無料。

写真=熊野古道の継桜王子に立つ一方杉

(ニュース和歌山/2017年10月7日更新)