院展入選作『双牛』など5作品
戦前戦後における県美術界の発展に尽くした日本画家、山東光風(本名・正晴、1905〜91)の屏風5枚が、孫の坂口祥子さん(62、和歌山市)によって県内の美術館などに寄贈された。日本美術院院友に推挙されるなど大きな足跡を残した光風の絵が広く人々に親しまれることになる。坂口さんは「祖父を知る最後の世代として、作品を末永く伝える責任を感じていた。いまは『おじいちゃん、喜んでくれてるやろな』って、安堵しています」と目を細める。
和歌山市出身の山東光風は東京美術学校(現東京藝術大学)卒業後、和歌山高等女学校の教諭や公立中学校校長を歴任。教職の傍ら中村貞以に師事して研さんを重ね、23回の院展入選を果たした。また、県展市展の審査員や、同市杭ノ瀬の自宅アトリエを拠点に多くの門下生を育成。これら文化芸術への功績が認められ、1969年度県文化賞を受賞した。
坂口さんは光風の作品を、9年前に亡くなった母から受け継いだ。手元に置いておきたい気持ちもあったが、日本画に生涯を捧げた祖父を思うと、「より多くの人に見てもらう方がよいのでは」と考えるようになった。小品を縁のある人に手渡したほか、昨年末には和歌浦の風景を収めた『和歌の浦夕照』を玉津島神社へ、菅原道真が牛に乗った姿を描いた『天満丑』を和歌浦天満宮へ奉納するなど、絵のテーマに即した場所に寄贈していった。
一方で、たたみ2帖ほどもある屏風5枚はその大きさから、アトリエに残されたままとなっていた。どうしようかと思案する中で、とくに心惹かれたのが、画面いっぱいに二頭の牛が配された『双牛』だった。第57回院展入選作で、2013年の「県文化表彰50周年記念展」で展示された代表作の一つ。「作品の価値を分かってもらえる場所に」と、県立近代美術館に寄贈を申し出たところ、選定委員会を経て収蔵が正式に決定した。「念願が叶いました」と晴れやかな笑みを見せる坂口さん。同館によると今後、コレクション展などで紹介する予定という。
また、残る4枚の屏風も、かつらぎ町の「水とみどりの美術館すぎのこ」、串本町の「ギャラリーきのくに」へ2点ずつ寄贈され、すべての屏風を県内で鑑賞できる体制が整った。
幼少期から祖父と多くの時間を過ごした坂口さんは、「毎朝5時の乾布摩擦と、テレビでの相撲観戦以外は、ほぼ一日中絵を描き続けていました」と振り返る。光風の作風について、「見る人の気持ちにスッと入ってくる、繊細で日本的な美しさがある」と話し、「これを機に、たくさんの人に鑑賞していただければうれしい」と願っている。
(ニュース和歌山/2026年6月27日更新)




























