耕作放棄地再生と一石二鳥

 農家の高齢化による担い手不足が問題になる中、紀の川市粉河の農園、観音山フルーツガーデンは7年前から、技術指導と耕作放棄地再生を合わせた「のれん分け」で農業を始める若者を支援している。これまで15人以上が独立。児玉典男社長は「都市部から地方に移住したいと考える若者は多い。農業を活性化することで、地域の生産者として定着し、活躍してくれれば」と期待する。

 1911年に創業し、100年以上の歴史を持つ同農園はかんきつ類を中心に栽培。インターネット販売のほか、神戸、京都にフルーツパーラーを展開するなど積極的に販路を広げている。30年前から耕作されなくなった周辺の土地を借りて品種を増やしており、今はミカン、ハッサク、ライム、イチジクなど約30種類を栽培する。

 近年は新規就農支援に力を入れる。新たに農業を始めるには農地の確保と技術習得が課題となるため、同農園は周辺の耕作放棄地を借り、研修生と共に開墾。独立する研修生にはその農地を託す。「果樹栽培は収支が成り立つまで5~7年かかるが、うちで植樹まですることで、自立への期間が短くなる」と児玉社長は話す。

 栽培作物は「観音山」ブランドとして同農園が仕入れることで、販路を保障する。また、独立後に自力で増やした農地の作物は自由に販売できる。2年間の研修を経て昨年12月に独立した大阪出身の田中良さんは「自分の農園を持ちたくて、知名度がある和歌山の果樹を選んだ。研修中に栽培技術や経営、販売を学ばせてもらった。年収1000万円が目標」と意欲を見せる。

 現在、自社管理または独立した人が再生し、活用している耕作放棄地は18㌶以上になる。3年前から土地を貸す同市の政本英嗣さんは「親から農業を継いだが兼業は難しく、土地を手放したくても借り手がいなかった。若者がレモンを作っている姿を見るとうれしい」と顔をほころばせる。

 児玉社長は「紀の川市にはおいしい果物があるけれど量が少なく、全国的な知名度はなかった。しかし種類の多さはブランドになり、収入が増えれば、担い手は現れる。もうかる農業をやりたい人は歓迎」と熱を込める。

 同農園(0120・593・262)。

写真=みかん畑で談笑する児玉社長(左)と昨年末に独立した田中さん

(ニュース和歌山/2020年2月29日更新)