聖武天皇が行幸し、その美しさを称えた和歌山市和歌浦中の玉津島神社で5月5日㊋、海南市下津町の橘本神社から贈られたタチバナの苗木が植樹された。市指定天然記念物の御神木から接ぎ木して育てた高さ約1㍍の5年もの。橘本神社の前山和範宮司の手によって拝殿右側に据えられ、神事が執り行われた。

橘本神社の前山宮司㊧と玉津島神社の遠北宮司。手前は植樹したタチバナの苗木

 タチバナはミカンの原種で、古事記や日本書紀にも登場する日本固有の樹木。冬でも葉が落ちず、常緑であることから「永遠の生命」「繁栄」を象徴する。初夏に白い花を、11月ごろに直径3㌢ほどの小さな実をつけ、成木は約2㍍になる。橘本神社は、菓祖・田道間守が中国から持ち帰ったタチバナを日本で最初に植えた場所とされ、ミカン発祥の地と呼ばれる。

 植樹のきっかけは、玉津島神社で昨年12月、日本三大桜のひとつで岐阜県の「根尾谷淡墨桜」を拝殿左側に植樹したことに始まる。京都御所紫宸殿の「左近の桜、右近の橘」にならい、対となるタチバナを探していた同神社の遠北光彦宮司。一方、橘本神社の前山宮司は4年前から、柑橘文化の源流となるタチバナの苗木を地元小学校などに植樹し、郷土の歴史を次世代へ伝えようと取り組んできた。こうした互いの思いが結びつき、和歌山市で初となる植樹が実現した。

 遠北宮司は「聖武天皇の万葉歌にタチバナを歌題にした『橘は実さへ花さへその葉さへ枝に霜降れどいや常葉の木』があり、歴史的な縁を感じる。両神社の繁栄につながり、地域の人が見に来てくれる木に育ってほしい」と語り、前山宮司は「和歌の神様を祀る玉津島神社に、万葉集にも詠まれるタチバナを植樹できたことは非常に意義深い。和歌山の主要産業の一つである柑橘に親しんでもらえればうれしい」と期待を寄せた。

(ニュース和歌山/2026年6月20日更新)