家庭菜園ニーズ受け新制度

 防犯や防災の面で問題になっている空き家、農家の高齢化や労働力不足で増える耕作放棄地。2つの地域課題解決を目指し、海南市が2年前、空き家バンクに登録される建物に農地を付けて売買できる制度を設けたところ、田舎暮らしを望む人の心をつかんでいる。同市都市整備課は「移住フェアで多かった『家庭菜園をしたい』との希望にうまく合った」と手応えを感じている。

 本来、同市で農地を手に入れるには、3000平方㍍以上耕作していなければならない。同市農業委員会は2018年、空き家バンクに登録した家と隣接する農地100平方㍍以上をセットに売ったり貸したりできる制度を特別に設けた。すると和歌山県内外からの問い合わせが増え、昨年度は7軒、今年度は新型コロナウイルスがある中で1軒が売れた。13年以降、契約に至った14軒中8軒が農地付き。県内のほか、大阪や兵庫などから移り住む人もいる。


 昨年11月に同市の山間部、扱沢へ移住した大阪出身の田中康子さん(70)は、築100年以上の古民家と約1300平方㍍の農地にひかれて購入した。柿畑と庭の手入れ、住居のDIYを満喫する日々。「隣近所と密集しておらず、実家のある大阪へ行きやすい立地が魅力。今後は大豆やお茶などを育てたい」

 空き家バンクを使い、農地付きの物件を仲介する自治体は増えている。紀の川市は昨年、制度を設け、今年4月には県内で初めて大手不動産会社と協定を結び、空き家の掘り起こしや、民泊・カフェへの利活用を進める。和歌山市は9月、1000平方㍍までの小規模な農地を付けられる制度を新設した。来年4月からは移住希望者のお試し居住を始める計画だ。

 こうした動きについて県建築住宅課は「国が推奨しており、全国的にも注目されている。人が密集する市街地から少し離れた田舎での暮らしを考える人にとって、建物と土地の可能性につながれば」と願っている。

写真=古民家隣りの柿畑で手入れする田中さん

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 ◎セミナー・相談会「空き家予防のための実家の将来設計」…11月15日㊐午後1時半、和歌山市市小路の河北コミュニティセンター。29日㊐午後1時、同市西高松の和歌山県立図書館。県建築住宅課(073・441・3184)。

(ニュース和歌山/2020年10月3日更新)