徳川頼貞集めた音楽資料 読響が寄託

 

 紀州徳川家の16代当主、徳川頼貞(1892~1954年)が私財を投じて集めたコレクション「南葵(なんき)音楽文庫」。ベートーヴェン直筆の楽譜や1500~1900年代の音楽書など2万点にのぼる貴重な資料を管理する読売日本交響楽団が県に寄託した。

 1918年に頼貞が東京・麻布の自宅敷地内にに開館した、国内初の音楽専用ホール「南葵楽堂」併設の図書館で公開されていたもの。関東大震災で閉館したものの損傷を免れ、77年から同楽団が所有していた。ベートーヴェンが編曲したロシア民謡や、ベルリオーズの劇的交響曲『ロミオとジュリエット』の楽譜をはじめ、ヘンデル、ロッシーニ、リストといった有名作曲家の自筆楽譜や書簡、1500年ごろに印刷されたとみられる西洋の音楽書籍がそろう。

南葵文庫_dc 寄託される2万点のうち、特に貴重な98点は県立博物館、このほかは県立図書館で管理する。今後、専門家が研究を進め、電子化して世界へ発信するとともに、県内では来年末に展覧会などを開いて公開する予定だ。

 12月2日の寄託契約調印式で、同楽団の小林敬和(ひろかず)理事長は「幅広く公開、活用されることをうれしく思います。和歌山への里帰りといった意味もあり、理想的な落ち着き先。読響も記念コンサートを開き、和歌山の音楽文化の発展に寄与したい」と話していた。

写真=寄託したベートーヴェン直筆の楽譜

 

(2016年12月10日号掲載)