保存求め和歌山市へ署名提出

 和歌山市今福に残る登録有形文化財「郭家住宅」の保存を呼びかける「郭家住宅の会」は、同市に同住宅の公有化などを求める7500筆に及ぶ署名を提出した。

 郭家住宅は1877年、代々紀州藩の御典医だった郭家が建設した木造建築。2階正面からバルコニーがせり出したコロニアルスタイルと呼ばれる様式で、幕末から明治にかけ長崎、横浜、神戸など外国人居留地に建てられたが、現存するのは数えるほどだ。数寄屋の煎茶座敷は幕末文化を語るうえで貴重で、建物全体として建築史学会から同市へ保存要望書が出されている。

 地域の文化財として残そうと、2017年に「郭家住宅の会」が発足。見学会などを開催し、建物の魅力を発信してきた。しかし、老朽化が進み、一昨年には紀州青石で作られた塀の一部が倒壊。危機感は募り、昨春、「郭家住宅の公有化」「地域のまちづくりのために現地保存・活用」を市に求める署名活動を始めた。新型コロナウイルス拡大を受け、イベントで呼びかけられない中、個人をたどる地道な運動で、目標の5000筆を上回る7500筆に達した。

 署名は昨年11月25日、尾花正啓市長に手渡した。世話人代表の西山修司さんは「和歌山で近代医学が広まる時代が背景にあり、建物に関する文書も残る。歴史的建造物はまちの魅力を高めるうえで欠かせず、市にはこの署名の重みを感じてほしい」と話している。

(ニュース和歌山/2021年1月16日更新)