tayousei 都市化によって失われつつある多様な生態系を維持しようと、県は9日、「人と自然をつなぐシンポジウム」を県民文化会館で初開催。300人が現状報告に耳を傾けた。

 最初に、植物学者の岩槻邦男東京大学名誉教授が「生物多様性のいまを語る」と題して講演した(写真)。地球上の生物は150万〜180万種が分かっていると説明し、「自分たちは地球の自然の中で生きており、生命を維持できるかは周囲とどう共存するかにかかっている」と説いた。

 続く質問コーナーで、フクロウの仲間、アオバズクを研究する東海南中学校2年の宗尚輝さんが「ある生物を守るために、雑木林の木を切るのが良いのでしょうか」と問いかけた。岩槻名誉教授は「里山が放置されると多様性に変化が出る。試行錯誤中で明確な答えはなく、その場所で知恵を絞ること」と回答した。

 さらに、向陽中学校理科部の生徒5人が、海南市の孟子不動谷で実施している鳥類や両生類、は虫類などの生態調査結果を報告。耕作放棄地が増えたことによる里山の環境変化が、チョウやカエルの生息場所や数に影響を及ぼしたことを紹介し、里山が生き物にとっていかに重要かを訴えた。

 県は2020年度まで毎年1回、同様のシンポジウムを開き、生物多様性維持に向け広く理解を求める。

(ニュース和歌山2017年1月14日号掲載)