駅やバス停が近くにない地域に住む人たちの交通手段確保に和歌山市などがデマンド型タクシーの導入を試みている。タクシー車両でルートと時間を設定し、予約があった時のみ運行するもので、同市は今年度、加太で試験運行をスタート。他3地区でも実験を行った。紀の川市も山間部で運行を進める。人口減と高齢化を踏まえた交通網確立は課題ながら、利用が伸びないのが現状だ。

デマンド型交通 導入試み 危機感も利用促進に課題

 全国の市町村で交通網形成計画の策定が進む中、課題となっているのが駅、バス停が近くにない地域の足の確保。乗用車の利用増や人口減などの影響で、路線バスやローカル線の運行廃止が進むと、買い物や通院に支障を来す人が増え、中でも高齢者の交通難民化が危ぐされる。

 対応に迫られる自治体が試みるものの一つがデマンド型タクシーだ。タクシー車両で路線バスと同じように運行ルート、時間を設定。運行は予約があった時のみで、運賃は一部行政が負担するため安い。巡回バスより低予算で実施でき、取り組む地域は多い。

 和歌山市は一昨年に加太で、調査目的の実証運行に着手した。南海和歌山市駅〜深山間の路線バスが市駅〜坂田間と短くなったのを受け、8、9月の間、加太駅を起点に小島住吉、淡嶋神社、サニータウンと3系統で1日4往復8便設けた。しかし、1464便中、稼働は29便、利用者40人で、稼働率2%だった。

 今年度からは加太地区交通運営協議会が主体となり、市が補助する形で試験運行。9月から今年3月までルートも坂田、木ノ本松源まで延長した。しかし、12月までは2640便中、運行は20便、利用者23人と稼働率は0・8%に下がった。

 協議会の尾家賢司代表は「加太は近くの人が乗り合わせて出かける傾向が強い。ただ人口が減り、高齢者の免許返納が進んだ後、デマンドがなかったら交通難民になる」と危機感を募らせ、「最初、乗合を強調しすぎた。一人でも積極的に乗っていいことも含めPRし直し、利用の促進を皆で検討したい」。同市交通政策課は「予約など時間縛りの課題があり、弾力的な運用方法を事業者と相談してゆく」と語る。

 また、同市は今年度、小倉、和佐、湊で20日間の実証運行を実施した。現在、結果をまとめているが、「利用は低調」(同課)。和佐地区連合自治会長の杉山清一さんは「スーパーや病院などに直結しないため、便利さが実感できなかったようだ。デマンドと合わせ、地域にあった別の形も含め続けて考えます」。

 紀の川市では3年前から山間部の赤沼田〜名手駅間を1日4往復8便で試験運行し、一昨年は年間183人、昨年176人の利用があった。こちらは登録制で周知に問題がないものの、住民に利用を遠慮する傾向がある。そのため、数は伸びないが、来年度には本格運行に切り替えたい意向だ。紀の川市は広く、将来的に不便な地域が増える懸念があり、同市地域創生課は「巡回バスとデマンド型タクシーを混ぜ、新しい乗合交通を作り上げる」と力を込める。

 公共交通に詳しいわかやまNPOセンターの志場久起副理事長は「バス路線廃止で始まった紀三井寺の地域バスは、住民が連れだって利用し定着させた。一人暮らしの高齢者が引きこもらず、地域で豊かに暮らすため公共交通の充実は欠かせず、デマンド型の導入はその最初の段階。住民が本気で定着を目指すべき」と話している。

写真=加太地区を走るデマンド型乗合タクシー

(ニュース和歌山/2019年1月26日更新)