和歌山県は「県安全・安心まちづくり条例」の改正に乗り出し、不審者情報を県に提供するよう住民に努力を求める方針を示した。改正案は6月議会に提出する見通しだ▼2月に紀の川市の小学5年男児が刺殺された事件を受けたもの。事件前に木刀を振り回す容疑者を住民が見たり、子どもたちが追い回されたりしたが、警察へ通報されることなく悲劇は起きた▼改正案では、暮らしの安全を脅かす事態が起こりうる情報を入手した県民は、県に提供するよう努めるとの条文を加える。これを努力義務として条例に明記するのは全国初で、子を持つ親としては、地域に不審者がいればいち早く通報してもらう方が安心だ▼しかし、問題は通報する際の基準がはっきりしない点。地域のつながりが希薄化した今、近所づきあいのささいないざこざでの通報や、住民間で監視し合うことになりかねない。制度で安全を確保する必要性は理解できるが、結局は地域で暮らす人同士が顔の見える関係をつくることなのだろう。(林)