空き家率の高い都道府県ランキングで、和歌山県は第2位。総務省統計局の2018年住宅・土地統計調査結果によると、日本の空き家数は約850万戸と過去最多で、このうち県内には9万戸以上があります。空き家問題という悲報の解決を模索し、未来ののびしろに変えようと取り組むプロフェッショナルがいます。海南市の集落、冷水浦に拠点を構える「Re SHIMIZU─URA PROJECT」です。  

 2017年秋、大工、建築家、デザイナーの3組による共同企画として始まりました。代表の伊藤智寿さんを中心に空き家4軒を購入し、住宅兼工房として改修しています。目指しているのは、“集落のホームセンター”です。「空き家を改修してローカルで暮らしたい」「防災の一環としてDIY技術を磨きたい」と考える人に向け、改修技術と資材調達の助けとなり、さらには心のより所にもなる場所をつくろうとしています。これまで和歌山大学や京都芸術大学の学生、20〜30代の移住者が教わりに来たといいます。  

 伊藤さんはちょっと風変わりな大工です。「よい空間はプロセスから生まれる」とのコンセプトのもと、様々な改修プロジェクトにかかわり、設計や施工だけでなく、企画や運営まで携わります。周囲からは“旅する大工”の愛称で親しまれています。依頼主の思いと共鳴する限り、大工道具と旅道具を車に詰め込んで、日本各地の現場に出かけます。そのフットワークの軽さが愛称の由来です。  

 大阪出身の伊藤さんは「都会は人・モノ・情報が多く、受動的になりやすいですが、和歌山は手付かずの魅力にあふれ、能動的なアクションを通じて感性が磨かれるので楽しいです」と話します。未来ののびしろを楽しく活用しながら、若者や移住者と和歌山の縁を深める場所がつくれるなんてステキですね。

フリー編集者 前田有佳利(第3土曜日担当)

(ニュース和歌山/2022年2月19日更新)