前回に続き、今回も和歌山の高校のお話です。皆さんはビジコンって聞いたことありますか? 「ビジネスプランやアイデアを審査するコンテスト」のことです。今、全国の高校や大学で、社会課題解決のための実践的な学びとして、「PBL(プロジェクト学習)」が盛んに行われています。「探究型」の授業のほか、部活動や課外活動として取り組む学校も出ており、このPBLの貴重な発表の場がビジコンなのです。

 PBLは「答えがない問題」に対し高校生なりにアプローチし、解決策やアイデアを提案します。机上の詰め込み学習とは異なり、生徒自身が考える力や生きる力を鍛える主体的な学びであり、21世紀型の教育として、今後ますます重視される手法と言えます。

 前置きが長くなりました。3月、「地域社会にビタミンを」をテーマに、「第3回未来と健康のための高校生ビジネスコンテスト」が開催されました。関西の高校、高等専門学校、通信高校の在学生から266チームがエントリーした中、結果はなんと、和歌山県勢がワンツーフィニッシュ! 優勝はりら創造芸術高校の「里山ビジネス~木の実でおじいちゃんおばあちゃんを元気に!」、準優勝は慶風高校の「キミノコレファッションショー」と、いずれも私の居住地、紀美野町の高校です。関西都市圏の有名進学校が続々と参加する中、今回の上位独占劇はまさに快挙ではないでしょうか。

 人口約8000人の紀美野町は、従来、「地方の学校は教育には不利」と言われてきた過疎化が進む町です。が、今後の教育で注目されるPBLの世界では、小さな町の高校だからこそできる教育が、逆に強みになるのです。

 人口減少・少子高齢化が急速に進む県下で、高校の存廃議論が始まっていることは前回お話しました。では「地方でどういう高校が必要なのか?」「教育の中身は?」「持続可能性を高めるための地域の高校の強みとは?」──。この種の特色化(魅力化)の議論が抜け落ちているように感じます。

 今回の快挙は県教育への励みと共に、大きなヒントになるのではないでしょうか。未来の和歌山のために、和歌山にかかわる大人たちがPBLをして考えてみませんか?

和歌山大学・地域連携専門職員 増山雄大(第1土曜担当)

(ニュース和歌山/2022年6月4日更新)