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 小学生の落語家が大きな成果をあげました。「勇気出し亭うな晴」こと和歌山市西浜の中部晴陽くん(雑賀小5年、11)が宮崎県で開かれた「ひむかの国子ども落語全国大会」で最優秀に次ぐ優秀賞に輝きました。桂歌丸さんが大会の名誉会長を務める大会で、中部くんは3年前の審査員特別賞に続く受賞です。落語を子守歌代わりに育った中部くんは「次は優勝したい」と笑顔で誓います。

4回目の挑戦

 「つまらんやっこは坊主になれっていいますけど…」。大会の演目に選んだのは古くから伝わる落語「八五郎坊主」です。寺のお坊さんに僧になることを許され、法春との名前をもらった八五郎。友人に名を尋ねられたものの、読み方を忘れてしまいます。友人は音読み訓読みをめちゃくちゃに読み、ひどい名前に…。

 この大会へ挑戦するのは今回が4回目。2年生の時は「んまわし」で審査員特別賞に輝きました。今回は小学生24人にしぼられた中から最後の4人に残り、初めて決勝進出を果たし、金屏風が置かれた舞台で熱演しました。

 「八五郎坊主」は、中部くんが大好きな落語家、桂枝雀が得意とする演目です。大きなアクションと面白い顔をして笑わせる枝雀の芸風も少し取り入れました。「練習はしんどいけど、大会は盛り上がるので好きです。毎回、自信はあるんですよ」

笑い声が大好き

 中部くんはNHKの連続テレビ小説の『ちりとてちん』に影響を受け、3歳から座布団に座り、カスタネットで拍子を鳴らし、落語家をまねていました。その後、家族が買ってくれた『えほん寄席』のCDを聞き、毎晩寝入るのを習慣にしていました。

 何作かは覚えてしまい、落語が好きな人でつくるグループ、わかやま楽落会に6歳で入会した時は、「んまわし」を何も見ず、すべて語り、大人を驚かせました。

 しかし、最初は恥ずかしく、付けた芸名が「勇気出し亭」。好物のうなぎに自分の名をつなぎました。わかやま楽落会の発表会だけでなく、学校や近くの矢宮神社で披露したことも。お父さん、お母さんに聞いてもらうこともあり、母親の直美さん(43)は「ネタは覚えているのですが、笑ってしまいます。楽しんで続けているのがいいですね」。

 中部くんが感じる落語の魅力はお客さんの笑い声。「狙ったところだけでなく、狙っていないところで笑ってもらえるとうれしい」。客席の笑い声につられ、舞台で笑ってしまったことがあります。

 今は9月13日(日)に大阪で開かれる子ども落語大会への出場を控えます。将来は落語家か…と思いきや、「趣味で楽しみながらやりたいですね」。普段の笑顔もやさしい中部くんです。

(ニュース和歌山2015年9月9日号掲載)