江戸時代の医者

 病気やけがで手術をする時、患者が痛みを感じないようにする薬、麻酔。213年前の10月13日、世界で初めて全身麻酔を使い、乳がんを取り除く手術を成功させた人がいます。紀の川市出身の華岡青洲(1760〜1835年)です。青洲の里(同市西野山)の木村哲朗事務局長に話を聞きました。

 青洲の父は医者で、幼いころから病気で苦しむ人を身近に見て育ちました。麻酔なしの手術は患者が痛みで暴れ泣き叫ぶため、医者にとっても大変で、京都で3年間、医者になる勉強をした後、紀の川市に戻り、麻酔の研究に打ち込みました。

 材料にはマンダラゲという花を使い、完成したのは1804年、43歳の時。「自分の母や妻に実際に飲んでもらい試しました。マンダラゲには毒が含まれているため、妻は目が見えなくなるという苦しみを乗り越えての発明でした」  手術に使うメスやハサミ、乳がんの部分だけを取り除く新しい手術方法も考え、現在にも役立つ成果を残しました。

今も残る建物

 全国から集まる患者と、弟子入りを希望する人を受け入れるため、青洲が建てたのが春林軒です。手術を行った建物は、200年以上がたった今も、青洲の里に残っています。また、薬を作る建物や病室などは江戸時代と同じように建て直しています。

 青洲の活躍を学べるこの施設内には人形があり、当時の様子を再現しています(写真)。「薬草を入れていた薬箱、弟子に与えた、今でいう医師免許などを展示しています。青洲は中国の文章にも親しみ、『ものごとの本質を見抜くには、すべてを注意深く観察しなければならない』という意味の『活物究理』という言 葉を残しています。当たり前だけれど大切なこと。みなさんも自分の目で見て体験してくださいね」

 

青洲の里

○住所 紀の川市西野山473
○電話 0736・75・6008
○休み 火曜日
○春林軒・展示室見学時間   午前10時〜午後5時(11月〜2月は4時)

○春林軒・展示室見学料金   小中学生300円、大人600円

(ニュース和歌山/2017年10月11日更新)