17021801_board テーブルを囲み複数で楽しむボードゲーム。近年、これを売りにしたカフェやバーが都市部に登場、教育現場では知育教材として活用され、注目度が高まっている。和歌山市では2016年末、ボードゲームを楽しむ店の開設を目指すグループが立ち上がり、紀の川市では、不登校など人と接するのが苦手な人の立ち直り支援の一環で2年前から会が開かれている。いずれも多くの参加者があり、ボードゲームを通じたコミュニケーションの輪が広がりつつある。

和歌山市 交流拠点開設目指す会

 世界初 手塩にかけた ゆで玉子 地獄のようだ インドの香り──。5文字と7文字が書かれたカードを山札から引き、2回まで交換して短歌を完成させる「ミソヒトサジ」に興じるのは、2016年11月に和歌山市で開かれたリノベーションスクールの受講者たち。和歌山市西ノ店にある元将棋会館の活用を検討する中、ボードゲームができる拠点の開設を考え、12月と1月にゲームを使った交流会を和歌山市万町のプラグで開いた。「予想外の短歌になった(笑)」「このカードだともっと面白くなる」と盛り上がり、句の解釈を語り合った。

 古くはすごろくや将棋、戦後は人生ゲームやカードゲームと多様化してきたボードゲーム。近年は海外からの輸入品が普及し、領地を奪い合う戦略系、物語の主人公として他のプレーヤーと共にクリアを目指すロールプレイ系などジャンルが広がっている。30年以上愛好する和歌山市の稲塚康弘さんは「海外のゲームは、交渉、協力といった他のプレーヤーと接点が多い。連帯感や達成感が大きく、ここ2、3年で愛好家が増えている」と語る。

 交流会には会社員や親子、学生など約30人が参加。和歌山市の西岡純生さんは「子どもが興味があって来ました。やってみると、他のプレーヤーとのやりとり、臨場感などデジタルのゲームでは味わえない楽しさがありました」と喜ぶ。企画した小泉博史さんは「遊びゆえに人間性が出やすく、初対面の人と仲良くなれる。近くに伏虎義務教育学校ができるので、夜のバーだけでなく、日中は子どもたちが集まれる店にしたい」と描く。

紀の川市 不登校者ら支援に活用

 紀の川市では粉河駅前の古民家、山崎邸にあるカフェ「創」のスタッフが2年前に「和歌山ボードゲーム遊戯会」を立ち上げた。当初、不登校や引きこもり者の就労訓練の場として運営する創のメンバー数人だったが、和歌山県内外の愛好家が加わり、今は多い時で20人以上。好みのゲームに分かれ、一緒に机を囲む。立ち直りを支援する他の団体も訪れ、初めは仲間内で楽しんでいた利用者が、徐々に1人で初対面の人の輪に入っていくようになったという。

 15年以上引きこもりを経験したスタッフの草下敦司さんは「ゲームをしたくて始めましたが、今は相手と探り合うコミュニケーションが楽しい」と笑顔。今ではオリジナルのゲームを創作し、会の広報として活躍する。

 今後、ゲームを使った引きこもり者の自助グループ立ち上げも検討。遊戯会代表の棚橋洋次郎さんは「自分を語るのが苦手でもゲームを通じて人柄を知りあえる。匿名性を保ちつつ顔の見える関係を築けるコミュニケーションツールとして普及するのでは」とみる。

 

 それぞれ次回は、プラグが2月25日(土)午後6時。500円。申し込み不要。詳細はフェイスブックページ「ボードゲーム・ナイト@よろずまち」。山崎邸が2月18日(土)午後5時。200円だが初回無料。申し込み不要。遊戯会の活動はブログで随時更新。

写真=ボードゲーム「カタンの開拓者たち」を楽しむ参加者(プラグにて)

(ニュース和歌山より。2017年2月18日更新)