和歌山県観光ガイド専門員の紀州語り部を務める、海南市の芝村勉さん(86)が8月、『紀伊国【海南】名所図会を歩く』を出版した。江戸時代の地誌書『紀伊国名所図会』をもとに海南の歴史や出来事を記した。「海南の人が生まれた場所の歴史を知るきっかけになれば」と望んでいる。

紀州語り部 芝村勉さん一冊に

 芝村さんは熊野古道が注目される以前の1970年代から古道を歩き、本紙で連載を執筆。『熊野古道〜古道を歩くためのガイドブック』をはじめ、『JRきのくに線 駅名・トンネル名物語』などを出版し、故郷の歴史を伝えている。

 今著は『紀伊国名所図会』に沿って海南の歴史をつづった。図会には58項目にわたり海南の名所旧跡が紹介され、これに添い、長い年月をかけて知り得た様々な出来事を盛り込んだ。

 「琴の浦」は、和歌や漢詩などで伝えられ、訪れた人が記念に紫石を持ち帰り、硯石としたこと。「船尾」では史料から江戸時代の船尾の姿を探った。「菰池(こもいけ)」では、『続日本紀』に「蛙合戦」があったとの記述に注目。現在は家が並び、場所は特定できないが、史料に「蛙の群れが集まって戦った」とある一方、蛙合戦とは百姓一揆や水争いのことだとの説も紹介している。

 「人々の間で伝わってきた、小さくても面白い話を拾うように心がけました」と芝村さん。「本を通じ、ちょっと隣町に立ち寄り調べてみてくれればうれしい」と話す。

 A4判、216㌻。1080円。宮脇書店ロイネット店と福岡書店で販売。芝村さん(073・482・5090)。

(ニュース和歌山/2019年8月31日更新)