子どもの医療費助成が県内市町村で拡充されている。新年度から和歌山市が中学生までを対象に入院費を無料化するほか、岩出市では8月から、中学生までの通院費をこれまでの3割負担から1割負担に軽減する。小規模自治体が取り組む例が多い中、和歌山市では中学生までの医療費無料化を目指す署名運動が動き出した。「安心して診察を受けられるように」と母親たちの呼びかけに熱が入る。
子どもの医療費助成は、所得制限の有無や負担額に差はあるが、都道府県の6割が就学前児童を対象に実施している。うち群馬、鳥取は通院・入院とも中学生までを無料とし、所得制限もない。地方自治体からは、子どもの医療費無償化制度創設を国に求める声が強い一方、人口確保につながる点から、近年、市町村が独自に助成枠を広げる動きが目立っている。
県は、就学前までは各市町村と負担額を半額ずつ補助する形をとっており、小学生以上へは各市町村が独自に予算をさいている。
今年3月現在で、通院は、日高川町、印南町が18歳まで無料。中学生まで無料なのは紀美野町、九度山町、高野町など15町村で、特に紀中、紀南に多い。小学生までは紀の川市、橋本市、かつらぎ町など5市町。和歌山市、海南市、岩出市など8市町は就学前児童を対象にしている。
4月から橋本市は、通院・入院とも中学生までに助成枠を広げるほか、和歌山市は入院に限り中学生までを無料にする。岩出市は8月から、中学生までの通院を現在の保護者負担3割から1割とし、入院は無料にする。
医療費助成の内容は、子育て世代が住居を選ぶ際の大きな要素となりつつあり、「国の制度化が進まない中、拡充を進める近隣市町村の動きは無視できない」と岩出市保険年金課。厳しい予算の中、地方創生の交付金の活用を検討している。
県健康推進課は「中学生までを対象にしている自治体が多く、都市部では入院費のみを助成する傾向にある」とし、「市町村から要望はあるが、県は下支えする立場で、新年度も予算化はしていない。各市町村の考え方によるのが現状」と語る。
この中、和歌山市で中学生までの医療費無料化を求める「子どもの医療費助成制度の拡充をめざす連絡会わかやま」が昨年12月に結成された。代表を務める生協こども診療所の佐藤洋一所長は「子どもが小学生になった途端に、熱が出ても日をおいて来るなど診療を控える傾向がみえます。ぜんそくなど慢性疾患は定期的な診察が大切。お金の心配なく受診できる状態が望ましい」と話す。
連絡会では署名をインターネットなどで呼びかけるほか、病院やスーパーなどにポスターを掲示し、賛同者を募る。3月7日には群馬県で子どもの医療費無料化を実現した新日本婦人の会高崎支部の野村喜代子支部長を招いてシンポジウムを開き、群馬の取り組みを聞いた。和歌山市の2児の母親は「助成の充実した地域に引っ越す人がおり、定住促進になります。子どもの貧困、児童虐待もお金がない中で問題が起きる。その負担をやわらげることにつながれば」と願う。
署名は現在2万人弱で目標は10万人。6月には尾花正啓和歌山市長に提出する。佐藤代表は「4月にある統一地方選でも争点にしてもらい、2016年度予算に反映させてほしい」。和歌山市こども家庭課は「助成は一度始めると、毎年継続して予算確保が必要となる。どのような形でできるか検討せねばならない」と話している。
写真=3月7日のシンポジウムでは群馬県の取り組みを聞いた
(ニュース和歌山2015年3月21日号掲載)