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 地域の資源を生かした体験プログラムを一定期間、まちのあちこちで開く博覧会「オンパク」。市民が企画実施するため、観光資源に気づき、人材の発掘になると全国で注目が高まる。和歌山でも、オンパクの手法を取り入れた「御博(おんぱく)」が10月24日(土)から御坊市と日高郡、「プレ・フルーツ博」が11月1日(日)から紀の川市で開催される。まちづくりにかかわりのなかった市民が主役になり、地元の宝に磨きをかけ始めた。

 オンパクは温泉泊覧会の略語で、2001年に大分県別府市で開かれた地域体験見本市が発祥。市民が特技や趣味を生かした講座を開く催しで、大型イベントにはない手軽さが受け、全国へ広がった。今では温泉地に留まらず、愛知や沖縄など全国約60ヵ所でオンパク手法の博覧会が行われている。

 御坊・日高地域の御博は、10月24日から11月22日(日)まで、32のプログラムを催す。故郷での定住を促す活動をする御坊市の平野未花さんがオンパクを知り、仲間に呼びかけたのが始まりだ。農家や建築業、仏具店の経営者ら7人で5月に実行委をつくり、住民に参加を募ってプログラムを練り上げた。かつお節のルーツを訪ねる海辺の散策や農家によるスターチスの花かんむり作りなど、いずれも地域の農産物や史跡を盛り込んだプログラムを4ヵ月でそろえた。 このうちの1つ、「漁船で行くサンセットクルーズ」は美浜町でしらすの加工業を営む谷信子さんが企画した。「実行委に声を掛けられた時、40年間見続けてきた真っ赤な夕陽が思い浮かんだ。沖からの夕陽の美しさを美浜町の人にこそ味わってほしい」と力を込める。

 「間伐材でスツール作り体験」を開く日高川町の誉田(こんだ)昭浩さんは森林組合の職員だ。「ワークショップをするのは初めて。身につけてきた知識や技術を発信する場がほしかった」と話す。

 予約が埋まっているプログラムもあり、講師になる市民は準備に熱が入る。平野さんは「企画する中、まちに愛情を注ぐ人や物語がたくさん隠れていたと知りました。ここに遊ぶ所がないと思っている地元の人にも気づいてもらえれば」と願う。

 一方、紀の川市のプレ・フルーツ博は、住民と市の職員らで昨夏結成したフルーツ・ツーリズム研究会が主催する。再来年3月にフルーツ博を開く計画で、今回は地元に活動を浸透させようと企画した。11月1日から28日(土)まで、桃の染め物体験やフルーツを食べながらの百合山ウォークなど果物にちなんだ19のプログラムを展開する。果物の創作和菓子講座を行う桃山町の前田千恵さんは「講座がうまくいけば、いつか自宅で和菓子の教室を開きたい」と描く。

 同会は果物を題材にした料理レシピと川柳の公募や、フルーツの和菓子を味わう茶会を開くなど地域のファンづくりにも奮闘している。同研究会をコーディネートするNPOスローライフ・ジャパンの野口智子さんは「まちおこしがメンバーの自己実現の場になっている。オンパクは1つのステップ。体験交流で郷土愛の輪が広がり、地域のファンが増えれば」と期待している。

 観光と地域づくりを研究する和歌山大学経済学部の大澤健教授は「オンパクは地元の良さを市民が自ら再発見し、住民のやる気を引き出している。まちの魅力に気づき、まずは住民自身がまちを楽しむことが、本当の意味の地域活性化につながっていく」とみている。

写真=日高川町では間伐材を使ったスツール作り体験のテストを実施


 

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御博
 10月24日(土)〜11月22日(日)
 梅の天日干し作業と料理体験、黒竹で竹とんぼと壁かけ作り、県内最古のしょう油蔵で歴史を学ぶ講座など32のプログラムを開催。期間中の土日は日高川町の道成寺書院を初公開する。体験料は500円〜。詳細は「御博」HP。実行委(0738・20・4972)。

 

プレ・フルーツ博
 11月1日(日)〜28日(土)
 葛城山ヒルクライム、フルーツ酵素シロップで石けん作りなど期間中に19のプログラムを行う。体験料は1000円〜▽メーンイベント=7日(土)午前10時半〜午後4時、紀の川市西大井の紀の川市役所。フルーツカッティングショーや6年間果物しか食べていないフルーツ研究家の中野瑞樹さんのトーク、大茶会、いちじくのカレー、フルーツ寿司(写真)などの販売も▽ぷるぷるフルーツトレイン=28日(土)午前11時半〜午後2時に和歌山電鉄貴志川線でいちご電車の臨時号を走らせ、果物の寿司や和菓子を味わう。乗車料込みで2720円。詳細は「フルーツ・ツーリズム研究会」HP。市商工観光課(0736・77・0843)。2015102401_fruit

(ニュース和歌山2015年10月24日号掲載)