和歌山市観光協会が観光客向けの体験プログラム「わかやまあそび。」を今春立ち上げた。和歌山城や加太、和歌浦、雑賀崎と幅広いエリアで楽しめる26企画で、新型コロナウイルス感染対策を盛り込み、地域の団体や店舗と協力し磨き上げた。同協会は「和歌山らしさにこだわり、若い人たちにも興味を持ってもらえるよう考えた。魅力にふれてほしい」と望んでいる。

和歌山市観光協会 感染対策盛り込み 体験商品 26企画立ち上げ

400年前の記録から再現した紀州徳川家献上料理

 同協会は城下町の風情を生かした体験商品を整備し、昨春から販売する計画だった。しかし、新型コロナの感染拡大で中止に。それらをもとにし、同年夏に観光庁の「誘客多角化等のための魅力的な滞在コンテンツ造成に向けた実証事業」に応募。採択され、和歌山大学観光学部の学生の意見を反映させ、3密の回避策を盛り込み、新たにサイクルツアーなどを加え、26の体験を整えた。

 体験企画には「和歌山城で時代衣装着付け」「紀州伝承田宮流居合術の実技体験」「和歌山城ナイトウォーク」「紀州忍術ゆかりの恵運寺で写経体験」など城下町の歴史を打ち出した内容が多い。うち事前に行った協会会員向けの体験会で最も好評を集めたのが「紀州徳川家献上料理」だ。

 海南市の長保寺に残っていた400年前のレシピを使用し、初代藩主、徳川頼宣が伊勢へ鷹狩りに出かけた際、口にした料理を再現。和歌山市の料亭、ちひろと岡公園の茶室で提供する。和歌山の食材で作った鰤(ぶり)の杉板焼きや貝焼き、蛸飯といった品を上品に彩った料理で、普及に力を入れてきたKIYORA和歌山代表の植野千惠子さんは「海南海草調理会のメンバーが200回以上集まりレシピを作った熱意に感銘を受け、提供する所を探していました」。協会の体験会でも「和歌山へ来たお客さんに食べてもらえる」などと好評で、植野さんは「殿様だけが口にできた400年前の最先端の食文化を味わえます。いずれ外国の方に食べてもらい、世界へ広がる日が来てほしい」と望む。

手軽さが人気の釣り体験

 現状で最も申し込みが多いのは「手ぶらでカンタン海釣り体験」。既に23人が体験した。加太湾の堤防で初心者向けの釣りができる企画で、何も持たずに来て、午前9時から午後4時の間で楽しめる。受け入れる雑崎釣具店主の井上雅善さんは「若い人から子ども連れ、ちょっとだけ釣り糸を垂らしたい40〜50代の人まで様々。未経験者でも気軽にできるのがいいようです」。昨年後半、比較的釣り客は多かったが、「大阪方面から来る人が多いため今は減り気味。5月に入り、イワシが回ってくれば楽しめる季節になる。ちょっとした体験が地域の活性化につながると思う」と期待する。

 このほか、加太では「バギー体験」、和歌浦で「次世代バイクグラフィットレンタル体験」、雑賀崎の「日本のアマルフィ雑賀崎で路地歩き体験」と海辺を堪能できるものも多い。

 また、オンラインで開催する企画も。「楽しく学べる和菓子づくり体験」を受け入れる紫香庵の須賀良知さんは「実際に教えるのと違う難しさはありますが、2台のカメラを使って作り方を伝えています。体験した人が『めっちゃ楽しい』とSNSに書いてくれて反響は出始めています」。

 今後は全国の旅行検索サイトでも発信する計画で、同協会は「最近の観光客は地元の人に人気のあるものを求めます。まず和歌山の人に興味を持ってもらいたい。そしてコロナ後につなげたい」と話している。

 体験はいずれも申し込みが必要。詳細は同協会HP。同協会(073・433・8118)。

(ニュース和歌山/2021年4月24日更新)