4月と少し前になりますが、ウルフルズのトータス松本、スガシカオ、斉藤和義、渡辺美里ら人気ミュージシャンが一堂に会するコンサートに出掛けました。彼らに共通するのはビートルズが来日した1966年生まれで今年50歳を迎えるということ。この年生まれを「丙午(ひのえうま)世代」と呼ぶのだと、このとき初めて知りました。

 丙午とは、干支の組み合わせのひとつで、60年に一度回ってきます。「丙午に生まれた女性は気性が激しく、夫を不幸にする」「丙午の年は火災が多い」という迷信があり、この年の出産を控える夫婦が多く、全国で一時的に出生数激減のショックが起こりました。

 調べてみると、和歌山県も、前年と翌年が1万8000人ほどの出生数なのに対し、1966年は1万1962人と大幅に減少しています。50歳の方は、他の学年に比べてクラス数が少なかったなど、丙午ならではの思い出もあることと思います。

 ただし、出生数をみれば、1975年以降、減少をたどっており、昨年の県内の年間出生数は過去最少の7030人でした。晩婚化とそれによる第一子出産の高齢化を要因の一つとみて、近年は県も各市町村も婚活イベントや子育て支援に力を入れます。和歌山市は6月、世帯所得年300万円以下の新婚夫婦に、住宅購入費や家賃、引っ越し代などを補助する「ハッピーウエディング事業」や、3人目以上が生まれた人にカタログギフトと市長のメッセージカードを贈る「しあわせたく3未来ギフト」を始めました。

 今春に千葉県浦安市が全国初の公費助成による卵子凍結を承認したことも話題になりました。各地での施策強化や新規事業が今後、どれほどの効果につながっていくかは、まだ分かりません。もちろん行政のみならず、企業、地域もこういった状況に理解を示さなければ、本質的な解決にはならないでしょう。男性の育児休暇のように、「あるけど使いにくい制度」では、まったく意味がありません。

 さて、次の丙午は10年後の2026年に迫っています。昔に比べ、迷信にとらわれる人は多くないでしょうが、再び出生数激減は避けたいところです。様々な制度の成果も、数値の変化として表れているころでしょう。社会で活躍する女性が増えた現代、迷信のとらえ方も、いいように変わっていけばいいな、と思っています。(宮端)

(ニュース和歌山7月23日号掲載)