1964年、東京オリンピックの聖火リレーは9月〜10月にかけ4コースで行われ、ギリシャ・オリンピアの丘で採火された聖火が国内のランナーたちの手でつながれました。和歌山は9月26、27日の2日間で和歌山県内のスポーツで実績のある16歳〜20歳の45人がトーチを手に和歌山市内を巡り、和歌山県庁前に設けた聖火台に火を点しました。

 その時のランナーが和歌山市の山添利男さん(74)です(写真)。山添さんは当時19歳。住友金属ソフトボール部の選手としてランナーに選ばれ、第13走者で日赤前から県庁まで走りました。

 「見たことのない人だかりでした。道だけでなく、ビルの窓という窓も人でいっぱい。400㍍を2分で走る練習を重ねましたが、緊張で頭は真っ白でした」と振り返ります。県庁前に集まったのは3万人。新聞を見ると、家の屋根に登って眺める人も多く、当時の熱気が伝わります。

 先の東京五輪を描いた大河ドラマが始まり、今月は大会旗が和歌山県内16ヵ所を巡るフラッグツアーが行われています。東京2020オリンピック聖火リレーは来年3月26日に福島を出発、和歌山は4月10、11日です。「五輪再びと聞き、一生に一度の思い出をなぞり、もう一度走りたくなりました」と山添さんは話します。

 前回の和歌山での聖火リレーは、正走者のほか、副・随走者は約1000人おり、かなりの人が参加しています。山添さんは今もシニアソフトボールの代表を務め、今年は「ねんりんピック紀の国わかやま」の準備に余念がなく、シニアスポーツをけん引します。「今回は当時走り、今も頑張る人と若い人が一緒に走る機会があれば」と望み、「2㌔位なら今でも軽いですよ」と笑います。

 聖火リレーのコンセプトは「希望の道を、つなごう」。震災復興が掲げられています。復興の困難さは、経済やマンパワーに厳しさを抱えた地方の現状が根にあります。人口減、高齢化に直面する地方にこそ希望は欠かせません。ランナーについては未定ですが、かつてを知るシニアランナーが炎とともに郷土の記憶と未来を、若者に縦につなぐドラマがあっていい。復興、平和に加え、地方再興を照らす素敵な一幕になります。 (髙垣善信・本紙主筆)

(ニュース和歌山/2019年2月9日更新)