16060412_akama ツクシやタンポポ、ハコベなど身近な雑草を日本料理に生かす、大阪屋ひいなの湯(和歌山市加太)の赤間博斗調理長が5月、『おいしい雑草 摘み菜で楽しむ和食』を山と溪谷社から出版した。摘み菜を伝える会の平谷けいこさんとの共著で、雑草123種の特徴とレシピを掲載。赤間調理長は「身近に咲く草花にふれ、地元を愛し、自分自身を愛して。豊かな暮らしとは何かを考えるきっかけに」と願う。

 摘み菜とは、安全かつ安心できる場所で環境を壊さない程度に手で採る草木や花、実。空き地に生えるハコベ、海岸に根をつけるハマダイコン、野山のシャクなど身の回りにある植物を指す。

 島根県出身の赤間調理長は20歳で和食の世界に入り、京都や大阪などの料亭やホテルで勤め、8年前にひいなの湯へ。摘み菜に出合ったのは7年前、平谷さんの依頼でウリのようなクサボケの実の果汁を搾り、コンポートにしたのがきっかけだった。生まれ育った土地でできたものを食する〝身土不二(しんどふじ)〟を料理のコンセプトにしてきた赤間調理長に、地域の植物を大切にする摘み菜の文化が重なった。以来、酸味や苦味のある草も試行錯誤を重ね、美しい和食へと変えてきた。コース料理に取り入れるほか、海外でも講座を開き、発信に力を入れる。

 本は左ページに平谷さんが生育場所や栄養成分、薬効といった特徴を書き、右ページには赤間調理長がその個性を生かしたレシピを記した。タンポポと貝のしょうゆ焼き、ボタンの花のぼたもち、なすとアオバナの瑠璃(るり)寄せなど、色鮮やかな料理が並ぶ。 

 赤間調理長は「昔は家族一緒に採り、料理して食卓を囲んだ。核家族化が進み、一人で食べる人も多い今、あのころの豊かさを見つめ直してほしい」と話す。

 A5判、160㌻。1620円。山と溪谷社(03・6837・5018)。

(ニュース和歌山2016年6月4日号掲載)