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 和歌山県美術家協会会員で、洋画団体「示現会」和歌山支部前支部長の榎本敬子さん(76、和歌山市久右衛門丁)が、東京で開催中の日本美術展覧会(通称・日展)で10回目の入選を果たした。来年春の理事会を経て、会友になる見込み。榎本さんは「会友は大きな目標でした。初出品から30年近くと苦労しましたが、自分で自分を『頑張ったな』と褒めてあげたい」と喜びをかみしめる。

 1990年ごろから日展に出品している榎本さん。元中学校の美術教員で、勤めていた学校の理科室を描いた『水槽のある部屋』で96年に初入選した。

 退職した2000年以降は県内を中心に漁港を回って、絵の題材を取材している。目にとまるのは、漁で使う網、積まれた浮きやブイ、木でできた小屋、さびた焼却炉…。「パッと見て美しいものではなく、長い年月を経て、風化したものに魅力を感じるんです」。異なる場所で見たものを組み合わせ、作品にする。「ですから、描いた絵そのままの景色はありません。虚構の世界です」

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 こうして仕上げた『凪(なぎ)の記憶』シリーズで入選を重ねてきた。今回もひびの入った堤防をバックに焼却炉や古びたたこつぼなどを描いた。「漁港の地味なものでも、その場ではきらっと光って見えるんです。片隅にあるものにも美を感じることはある。そんなことを感じてもらえれば」と作品にメッセージを込める。

 日展は12月6日(日)まで、東京都港区六本木の国立新美術館で。火曜休み。1200円、高大生700円。➡抽選でペア2組を招待。詳細はニュース和歌山2015年11月7日号紙面をご覧下さい。

写真=「今後も描き続けたい、それだけです」と榎本さん
=10回目の入選作『凪の記憶’15』

(ニュース和歌山2015年11月7日号掲載)