鎌倉期の仏教説話『沙石集』によると、修行したが徳のない僧は、山深くに棲む槌型の蛇に生まれ変わるとされる。説法など口だけうまく、悟りを開いた知恵の眼や、合わせる両手、戒めを知って止める足を持たなかったため、死後は槌型の蛇、すなわち、口だけの妖怪、野槌に生まれ変わった。

 太さ15㌢、体長1㍍、頭の先に口があり、目鼻がない。野うさぎや鹿さえも丸呑みにする。人を見つけると坂を転がってきて足に噛み付く。人々は、野槌に触れるだけで死に、見ただけで高熱を出して死ぬと恐れた。

 昭和40年代、野槌はツチノコとして大ブームとなった。滝名の由来は、形が野槌に似ているためか、滝の主が野槌なのか、徳のない僧が修行をしたのか、知る人はいない。

(ニュース和歌山/2018年9月22日更新)

大上敬史さん作製「和歌山県の滝」で、県内の滝が紹介されています。