初監督映画『桜が咲く頃、交わした約束は、』が、マドリード国際映画祭で最優秀外国語短編映画賞に輝いた和歌山市出身の空下慎さん(34)。故郷での再会を誓い、別々の道を歩んだ男女3人の青春物語を桜や雪景色を背景に描き、「美しい世界観」と高評価を受け、12月のミラノ国際映画祭でも4部門にノミネートされました。近く和歌山の映画祭での上映を控え、話を聞きました。

運命の一曲

──マドリード国際映画祭で最優秀外国語短編映画賞に選ばれました。

 「会社勤めを辞め、初めて映画撮影に挑戦したのですが、周りの人に、『絶対に海外の映画祭で賞を獲る』と言い続け、SNSに書いて、自分を鼓舞してきました。無事に受賞できてほっとしています」

──この作品を撮影したきっかけは。

 「ずっと映画を撮りたいと思って、物語の筋は作っていました。ある時、知り合いのシンガーソングライター、松田真将さんのライブに行き、あるラブソングを聴いたんです。その歌詞が、私が思い描いていた桜の情景や、果たせない約束といった切ない物語の世界観と全く同じで、運命を感じました」

──桜が舞う風景がとてもきれいです。

 「圧倒的に人と違ったものを作らないと賞は獲れない。だからこの作品はどの短編映画よりもきれいに撮ることを心がけ、日本特有の桜のある風景や雪景色など兵庫県豊岡市で撮影し、海外の人向けに日本の美を意識し、編集しました」

故郷に凱旋

──作品にはどんなメッセージを。

 「田舎の風景を撮ると最初から決めていました。思い浮かんだのが兵庫で会社員をしていたころ、出勤時に通っていた豊岡市内にある、なんの変哲もない桜並木でした。地方では地域活性化のためにいろんなものを都会から呼び込んでいますが、何をもって幸せか、と考えた時、もともとその地にある素敵なものや風景を忘れがちなんじゃないかと思うんです。当たり前のようにそこある資源や素材って、都会にはない、お金で買えない素晴らしいものなんじゃないか。それを伝えたくて作りました」

──今月のKisssh─Kissssssh映画祭で披露されます。

 「海外の映画祭向けに作ったので、今回上映するものは日本人向けにリメークしています。和歌山に映画祭があると知り、地元の文化に貢献したいと思い出品しました。地元出身の私が海外の映画賞をいただいたことで、映画を作りたいと思っている和歌山の若者に勇気を与えることができたらうれしいですね」

──2作目が来年クランクインするそうですが。

 「学園もので、舞台は和歌山。詳しくは話せませんが、地域の方々の力をお借りして、一緒に作っていくつもりです」

 

Kisssh─Kissssssh映画祭

☆10/11〜13の3日とも台風予想のため延期。日程は未定

 10月12日㊏と13日㊐、和歌山市南大工町の岡久家具(両日)、和歌山城西の丸広場(13日)など4会場。昼の部は午前10時半〜4時半、夜の部は午後6時半〜10時半。『桜が咲く頃』など14作品を上映。両日5000円、1日3000円。11日㊎午後7時から同市万町の本屋プラグで前夜祭。詳細は同映画祭HP

(ニュース和歌山/2019年10月5日更新)