よく通る場所なのに、見過ごしているものってありますよね。今回は和歌山市のハムサンドさんから届いた「堀詰橋のバス停近くにある、考える人の銅像にはなぜ羽が生えているの?」を調査します。

 「考える人」といえば、ひじをつき、思索するポーズをしたロダン作のブロンズ像。それに羽とは…。

 同市の中心部、三木町交差点の北約200㍍の所にある橋へ行くと、植栽の間に羽の生えた銅像が設置されていました。台座には「天啓の宙」と書かれ、考える人とは違うようです。

 


 

和歌山大空襲を伝える天使のイメージ

 「堀詰橋のバス停近くにある、考える人の銅像にはなぜ羽が生えているの?」。「天啓の宙」というこの像を造った湯浅町の彫刻家、橋本和明さんによると、1945年7月9日の和歌山大空襲を後世に伝え続けるため、50年目の94年に設置された平和の像です。

 橋本さんは「羽は天使のイメージです。亡くなった人の魂と、今を生きる私たちの間を自由に行き交い、平和への思いを語り継ぐ存在です」。銅像内には設置に協力した人の名を刻んだ名簿を納めていると教えてくれました。

 像設置の中心的存在だった故・斎木早苗さんは、戦争の語り部活動をしていました。和歌山の平和を希(ねが)う会事務局長として、完成後は毎年7月9日に音楽や朗読で平和を祈るイベントを行っていました。

 97年から活動に参加する花田惠子さんは「和歌山大空襲を知らない世代が増え、当時を語れる人が減る中、像があることで皆の思いがまとまる。平和の大切さを伝え続けます」と話しています。

 斎木さん亡き後は花田さんが受け継ぎ、現在は「お祈りの会」として、終戦の日の8月15日に有志で周辺を掃除し、祈りをささげています。

(ニュース和歌山/2021年7月31日更新)