読者の皆さんから寄せられた和歌山に関する素朴な疑問を編集部が調査する「和歌山謎解き代行社」。今年も正月特別編です。多くの質問が届いた和歌山の神社仏閣に関する謎について調べました。

 

Q 玉津島神社にある石碑 内容は?

A 華道家が大正天皇即位を祝った

 和歌山市の福田功司さんから「玉津島神社の赤い鳥居に向かって右にある石碑の内容を知りたい」との質問です。

 碑文には「岡田松雲(しょううん)」の名前。子孫で嵯峨御流華道総司所の岡田芳和理事に聞きました。

 岡田松雲は和歌山で華道普及に貢献した人物です。華道の最高位を得た大正4(1915)年、天皇即位を祝う奉祝生花大会が開催され、松雲の卓越した生花技術が知れ渡りました。このころ松雲が詠んだ歌を、門下生らが石碑に刻み、玉津島神社に建てました。

 「御位に のぼります日の にほひ出し 花挿そへて 祝ひ奉ら舞」

 天皇即位に花を添えられた喜びと新時代への希望に満ちあふれています。

 724年に聖武天皇が玉津島へ行幸した際、和歌浦の美しさに感動。随行した山部赤人の歌が知られます。和歌の神が祀られ、多くの人々が訪れて歌を奉納してきた玉津島神社。皆さんも新春に一首、詠んでみては?

写真=大正時代の石碑

 

Q 伊太祁曽神社 正しい読みと漢字は?

A 神社は「伊太祁曽(いたきそ)」 地名は「伊太祈曽(いだきそ)」

 「伊太祁曽」に関する質問が2問。「伊太祁曽神社の読みはイダキソ、イタキソ?」「漢字は伊太祁曽、伊太祁曽、伊太祈曽?」です。伊太祁曽神社禰宜の奥重貴さんに尋ねました。
 まずは神社名の読み。「イタキソですね。神社の神はイタケルノミコト。功績のある神をイサオシとかイサオの神というのですが、イタケルノミコトのイサオシが縮まり、イタケイサオ、そこからイタキソになったとの説があります」
 漢字は、神社の「祁」と「祁」は実は同じ字。一方の地名は伊太祈曽で、読みは「イダキソ」です。「古文書では区別のない時代もありますが、現在は登記などの関係で明確にしています。漢字は読みにあてただけで意味はないです」と奥さん。
 ややこしくしていたのが南海電鉄時代の伊太祁曽駅で、「イダキソ」と読ませていました。整理すると、神社は伊太祁(祁)曽のイタキソ、地名、現在の駅名は伊太祈曽のイダキソです。

写真=初詣は人でにぎわうイタキソ神社

 

Q 無量光寺大仏 なぜ頭だけ?

A 鎌倉の大仏を目指したが…

 日本各地で様々な大仏が観光スポットになっています。和歌山市のペンネームはちさんから届いた「吹上の無量光寺に大きな首だけの大仏がありますが、なぜ頭部だけなのでしょうか」について調べました。
 同寺には首大仏という高さ3㍍もの大仏の頭が設置されています。月岡慶道住職によると、「元々の仏様は納定の大福寺のもので、1728年の製作当時は高さ5㍍の座像でした」とのこと。
 ところが1835年、大福寺が火事になり、青銅製の大仏は溶けてしまいました。そこで今度は高さ11㍍の鎌倉大仏を目指し、新しく造り始めましたが、1854年に発生した安政の大地震で被災し、頭部まで進行していた大仏造りを断念。頭だけの仏様が誕生します。さらに、大福寺は廃寺となり、1908年に本山の無量光寺へ移されました。
 何度も危険な目に遭ってきたこの仏様は、頭だけになっても街の人たちを見守っていてくれるのでしょうね。

写真=吹上にある頭だけの大仏

(ニュース和歌山/2022年1月1日更新)