工房兼自宅の目の前は加太漁港。海のすぐ側で制作する、青色がまぶしい独創的な陶器で人気を集めているのが、和田山真央(まさひろ)さん(37)です。出身地の大阪から移り住んで3年。和歌山では初となる個展を7月23日㊏~9月11日㊐、南海和歌山市駅前の市民図書館を会場に開きます。

人情味ある町

──なぜ加太へ?

 「3年前まで、実家のある大阪狭山市に住んでいました。引っ越すにあたり、海が近い場所がいいなと。湯浅町や淡路島などいくつか候補がある中、加太を選びました」

──決め手は?

 「まず訪ねる前に、観光協会に連絡したところ、案内してくれることになりました。いざ訪問すると、『移住希望の陶芸家が来る』とうわさになっていて、町の人たちが声をかけてくれたんです。正直驚きましたが、その親しみやすさが、大学時代に住んでいたアメリカ・サウスダコタ州の人に似ている気がしました。人情味のある人が多く、安心できましたね」

──移住し、変化は?

 「窓から海が見える場所に自宅兼工房をつくり、時間がゆったり流れる暮らしを送っていると、普段の生活で嫌なことがあってもイライラせず、『なんとかなるか』と思えるようになりました。作品に対しては、『こういうものでなければならない』との固定観念を取り払えるように。器や皿だけでなく、型や枠にはまらない、抽象的な花器やオブジェにも挑戦しています。自分が頭に思い描いたものをそのまま作っているからか、妻は『こっちに来てから仕事する姿が楽しそう』と言ってくれます」

鮮やかな青

──なぜ陶芸家に?

 「実は英語教師を目指して、サウスダコタ州立大学に留学しました。ただ、日本を離れたことで日本の芸術に目が行くようになり、ものづくりに興味がわきました。そして3年生の時、手に職をつけようと、同じ大学の陶芸コースに編入しました。なぜ陶芸かと言われると、どこか『日本っぽい』と思ったからです」

ワダヤマブルーの陶器

──作品の特徴は?

 「陶器に釉薬(ゆうやく)という液体をコーティングして色づけするのですが、液だれを利用し、細い線を入れたり、器の底にためて色の濃い部分を生み出しコントラストをつけたりします。特に青色を使った器は、見ていると吸い込まれそうなくらい鮮やかだと、ファンの方から『ワダヤマブルー』と呼ばれています。また、このブルーに少し緑を加えて、加太の海をイメージした作品もあります」

──市民図書館での個展が迫っています。

 「1ヵ所でなく、1、2階のあちこちを庭に見立て、茶道具や花器、オブジェなどを展示します。陶芸と聞くと『芸術とか難しそう』と感じる人が多いかもしれませんが、そもそも作っているのは皿や花瓶といった暮らしの中にあるもの。堅苦しく考える必要はないんです。今回の展示のように美術館でなく、普段の生活に比較的近い存在の図書館のような場所で、陶器を身近に感じてもらえる機会を増やしていきたい」

(ニュース和歌山/2022年7月16日更新)